劇場公開日 2018年9月14日

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「愚直すぎる三つ巴の愛。名作誕生!」愛しのアイリーン shironさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0愚直すぎる三つ巴の愛。名作誕生!

2018年8月3日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:試写会

「一番大切な人に幸せになって欲しい」
愛する気持ちが強すぎるが故に、空回りしていく悲劇。
いや、悲劇じゃないです。
観る人によって受け止め方は様々でしょうが。
とても切ないけれども決して悲劇ではなく、これまで人類が繋いできた、壮大な命のリレーを感じました。(T ^ T)

親離れしろと言う父親と子離れ出来ない母親に、一人息子の岩男。
どこまで子供の面倒を見るのが親の責任で
どこまで親の面倒をみるのが子供の責任なのだろう。
そんな父、母、息子の三人家族が、ある日突然、夫、嫁、姑の三人家族に入れ替わる。
自分の立場の変化によって、新たに生まれる責任や固執にキャパオーバーで大暴走。
4人だと2対2で安定してしまうようなところも、3人だと何かにつけて必ずパワーバランスが生まれる妙。

真っ直ぐで、あどけなさが残る可愛いアイリーン。
結婚には愛がある筈だと信じているけれど、愛がどんなものなのかは、まだ良くわからない。
私も岩男と一緒に、彼女の魅力に惹かれていきました。

舞台挨拶で
「夏パート」の安田さんが「冬パート」の木野さんへバトンを渡し、夏冬を通してシトイちゃんが居る。と、おっしゃっていましたが、そう考えると、テーマがよりクリアになってきます。

夏パート :男と女による、愛情とお金と性の物語
冬パート :姑と嫁による、結婚と家族と命の物語

もちろんそれだけではなく、ガツンと問いかけてくるテーマが多すぎて、
本来ならそれぞれのテーマで映画が一本撮れるレベル。
単純に答えの出ない混乱の中で、必死にもがく登場人物たち。
そこまで誰かを愛せる熱量に圧倒されます。
自分の為に生きればもっと楽なのに、誰かの為に生きようとするなかで生まれる歪み。
熱量が高ければ高いほど歪みは大きく狂気じみていくのですが…それははたして“大切な人”が望んでいる事なのか?
でも、そんな不器用すぎる愛も突き抜けると、頭ごなしに「間違っている」とは言い切れないパワーがあります。
だって、それも一つの愛には違いない。
“真剣じゃない関係”でいることの、なんと楽なことよ。

ツルとアイリーンは全く違うようでいて、実は根本は同じような気がしました。
お金で買われてきた嫁と、跡取りを産む為の嫁。
社会から見れば利害関係の道具でも、人類の営みから見れば命のリレーの走者。
夏パートの2人にも泣かされましたが、
冬パートの2人にも涙が止まりませんでした。

追記:三つ巴のシーンが秀逸!
駐車場での、アイリーンと岩男と見合い相手
岩男の部屋での、アイリーンと岩男とすりガラス越しのツル
最高でした。

shiron