「生きてるだけで、疲れる。わかる。」生きてるだけで、愛。 みみこさんの映画レビュー(感想・評価)
生きてるだけで、疲れる。わかる。
寧子がバイト先のトイレで津奈木に電話するシーン。もう愛想つかされてるし突き放すだろうと思っていたので、「今どこ」の台詞には表意をつかれたし、なんだかんだ気にしてくれたんだなぁ、と羨ましく感じた。愛というかピュアというか。二人の生活に性的なものは感じられなかったので、純粋に人として惹かれあっていたんだろうね。それもまた羨ましい。あと同棲3年って長いよ。なのにお互い知らないことだらけ。
そして、悪役がどこにもいない。誰にも共感できる。自分の殻に引篭もっていたい、生活のために自分を捨てる、駄目元でも好きな人を振り向かせたい。自分とこの週刊誌を守るために津奈木を罵倒した編集長にも。もしかしたら、みんな騙し騙し、少しずつ自分に嘘ついて生きてるのかもしれない。でも本心をちょっとでもわかってくれる瞬間がうれしいから生きていける、っていう寧子の気持ちわかる。
津奈木は仕事バリバリこなす安堂に、感情を思いのままにぶつける寧子に惹かれ、次はどんな相手に恋をするのだろう。寧子はどうか世間とのズレを楽しく思えるように強く生きてほしい。安堂は誕生日前に、踏ん切りがついてよかった。カフェバーはスタッフが定着するよう願う。
監督は長編映画が初とのこと。重いテーマですが中だるみせず、疾走感もあるため見ていて疲れません。登場人物をあまり深堀しない、悪くいえば表面的な、その人たちの生活を盗み見しているような撮り方が雰囲気に合っていていました。説教臭くも押し付けがましくもない。この人たちはこう生きてます、っていう感じがよかった。エンディングテーマがこれまた切なくて、劇場出た後もしばらく余韻を残してくれる。
久々に人に紹介したくなる映画と出会えてよかった。