「「活動写真」は「無声映画」にあらず。」カツベン! yuiさんの映画レビュー(感想・評価)
「活動写真」は「無声映画」にあらず。
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日本に映画というものが輸入されてから、「発声映画(トーキー)」が普及するまでのごく短い期間を全盛期とした活動弁士。映画は彼らの語りによって喜劇にも、悲劇にもなる。解釈の余地の幅があるからこそ、彼らが扱うのは「映画」ではなく、活動「写真」なのだ、ということを、楽しみながら理解させてくれます。
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様々な小道具が画面内に凝縮していて、見ているだけで楽しめます。様々な道具の中には、時代考証に則った要素も、創作的な要素も含まれているのでしょうが、全体として統一観のある世界を構築しています。
同時代の映画産業の変遷を扱った作品としては、『アーティスト』(2011)があり、こちらもまた優れた作品ですが、サイレント映画の挽歌とトーキーの勃興を扱った『アーティスト』と比較して本作は、山岡秋聲の台詞を使って時代の移り変わりを示唆する場面はあるものの、あくまで活動写真の活き活きとした側面に焦点を当てています。
なお、成田凌さん扮する染谷俊太郎が頼りがいがあり過ぎて、永瀬正敏さん扮する山岡秋聲との師弟関係、そして成長物語としての要素がやや薄まってしまったように思いました。
既に全廃してしまったかのように思える活動写真ですが、現在も様々な劇場で公開されており、活動弁士として活躍している方も多数おられます。こうした実際の活動弁士の語りを聞きたくてたまらなくなるような作品でした。
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