「映画への愛」カツベン! 太陽伝さんの映画レビュー(感想・評価)
映画への愛
東映の会社マークが、以前の見慣れた、波濤が岩に砕け散るものではなく、古色蒼然とした墨が滲んだようなものになっていたのには驚いた。
そしてファーストシーン、ガキっ子らが小立ちの中を疾走する。光と闇の光芒の中を横切る。するとその向こうに女形(当時は活動写真でも女人禁制)の役者が放尿しているのに気付きガキっ子が振り向く。我々もその有り様にビックリし呆れて抱腹絶倒する。以後のエンターテイメントの展開に期待が膨らむ。
梅子は芝居小屋の裏に俊太郎を誘い、その便所の掃き出し窓の小さな引き戸を開け侵入し、一緒に活動写真を見る。梅子と俊太郎にとっての活動写真への入口となるのは、その小さな引き戸となった。
また高良健吾が梅子(その時は松子)に襲いかかり迫ろうとしたときに、箪笥が飛び出し、隣り合った部屋で高良健吾と俊太郎が箪笥を互いに押し合って、掛け合い漫才のような格好になる。
ついにひとつの段の抽出しが落とされ、ぽっかりと穴が空いたようになる。その「長方形」の穴が、便所のぽっかりと開いた引き戸の「長方形」とイメージが重なりあう。もとより活動写真とは「長方形」であり、我々が視ているスクリーンも「長方形」である。
何か、この映画のひとつのモチーフのように感じられて仕方ない。どうだろうか?
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