「自由なアレンジ」カツベン! Imperatorさんの映画レビュー(感想・評価)
自由なアレンジ
周防監督が、半年前の別のトークショーで、「日本では、“サイレント”時代の映画館が、一番うるさかった」と、“逆説的”な現象に言及していた。
弁士が語り、観客も騒いだからである。
本作品では、その様子が自然な形で映し出されている。
この映画の一番の見所は、サイレント映画は弁士の“口舌”一つで、内容さえ変更可能という、“自由なアレンジ”の面白さだろう。
内容を変えなくても、しゃべり一つでニュアンスは変わる。
冒頭の少年時代のマキノ映画から、ラストに至るまで、その面白さが全開だった。
ストーリーも、練りに練られており見事だった。
伏線はしっかり回収されるし、小道具も素晴らしい役割を果たす。鞄の金、怪盗「ジゴマ」、キャラメル・・・。
キャラクターも、それぞれが最後までブレずに、一貫した役割を全うしている。コメディーならではの、適度に“ぶっとんだ”キャラが多いのも楽しい。
“たんすの戦い”は、チャップリン風のコメディーで楽しめた。
しかし、ラスト付近の長すぎるドタバタ劇には辟易した。
活劇アクションを狙ったのだろうが、失敗だろう。周防監督には、この方面の才能はなさそうだ(笑)。
どうせやるなら、思い切って、“モノクロ & 2倍速再生”で良かったのではないか。その方が、古典的なサイレント喜劇風の可笑しみが出せただろう。
楽士の音楽も面白かった。
「青木館」では、三味線、クラリネット、打楽器の3人だけなのに、「たちばな館」のオーケストラよりも良い味を出している。
DVDでも楽しめるタイプの映画だと思うが、こんな映画なら急いで観たいものだ。
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