劇場公開日 2019年12月13日

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「幸せはキャラメルの味」カツベン! おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5幸せはキャラメルの味

2019年12月18日
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鑑賞方法:映画館

楽しい

その存在は知っていても、実際には見たことのない「活動弁士」。その仕事ぶりや裏事情が知れるのではないかと、興味をもって鑑賞してきました。率直な感想としては、当時のノスタルジックな雰囲気が劇場全体を包み込むような感じがとてもよかったです。活動写真に夢中になる市井の人々の息づかいが感じられるようでした。

ストーリーとしては、活動弁士に憧れる少年の恋と成長と挫折をコミカルに描いています。ド派手な展開はないものの、小さな事件や出来事が次々と起こり、見ていて飽きることはありません。そして、その一連の騒動には因果関係があり、ご都合主義に陥ることはほとんどないので、序盤こそテンポがややのんびりしているものの、以降はとてもスムーズに展開していると感じました。

また、キャラメルの思い出、靑木館二階の床板、映写技師の宝物、映画監督との出会い等、序盤からいたるところに張り巡らせた伏線の数々を、中盤以降で丁寧に回収し続けているのもよかったです。特にキャラメルの甘さは、食べてもいないのに口にも胸にも広がってくるようで、脚本は本当によく練られていると感じました。

肝心の活動弁士については、単なる吹替的な役割ではなく、映像を自分なりに解釈して説明している姿が、実に興味深かったです。これなら、弁士によって作品の味わいが大きく異なり、人気弁士のもとに客が殺到し、映画館が人気弁士を欲するのもうなずけます。そんな人気弁士に扮する成田凌くんのカツベンぶりも、なかなか見応えがありました。

欲を言えば、活動弁士という職業の魅力や苦労や存在意義などをもっともっと描いてほしかったし、後味は悪くないもののラストはもっとハッピーに締めてほしかったです。とはいえ、映画好きなら、日本の映画黎明期を描いた本作を通して、当時の雰囲気に触れてみるのも悪くないかと思います。

おじゃる