「冷戦の犠牲になった人々に降り積もる雪」レッド・エージェント 愛の亡命 とえさんの映画レビュー(感想・評価)
冷戦の犠牲になった人々に降り積もる雪
1959年、ソ連の外務省高官 秘書サーシャが、学校の事務員であるカティアと恋に落ちるが、実は、彼女はアメリカのスパイだった
これは劇場未公開作品ながら、なかなか面白い作品だった
冷戦時代のソ連を舞台にした女性スパイもの
スパイものといっても、「007」のようなアクション作品ではない
幼い頃に両親を政府当局に殺された恨みから、アメリカのスパイをするようになったカティア
しかし、情報を得るために近づいた政府高官のサーシャを本当に好きになってしまう
そこからの彼女の行動が切なかった
愛する人でありながら、ターゲットでもあるサーシャの命を助けるためには、サーシャをアメリカに亡命させるしかない
サーシャには
「私も後からついていくから」という嘘をついて先に亡命させる
また、カティアの姪であり、アメリカ生まれのローレンに物語を語らせることで「今では考えられない冷戦時代のソ連の状況」を見せつつ、ローレンとマリナの交流を通して、「時代の犠牲になった子供たち(マリナ)」の現実も描く
冷戦当時のソ連は自由に行動することすら許されなかったのだが
それから30年が経ち、冷戦が終結。
ソ連はロシアとなり、アメリカから入国することも、ソ連時代は許されなかった同性愛も可能になったけど、国民の心の中には消えることのない苦しみを残した
原題は「雪が降っているにもかかわらず」
「雪」とは冷戦を示し
同じ国に生まれながら「雪」が降っている時代に生まれ、出会ってしまったために悲しい運命をたどることになってしまった人々を描いている
冷戦が終わり、事実上は雪解けとなるが、彼らの心には雪が残り続ける
完全な雪解けとなるにはまだまだ時間がかかりそうな余韻もありつつ、新しい世代に希望を感じさせる作品だった