「壮大美麗な一大悲劇」パドマーワト 女神の誕生 しずるさんの映画レビュー(感想・評価)
壮大美麗な一大悲劇
インド映画は未体験。
予告編を見掛けて、これはインド版『天と地と』か『レッドクリフ』なやつかなーと興味を抱き観賞。
実際、製作費をかけた大規模歴史エンターテインメントではあるが、原典が叙事詩であると示されているし、私としてはシェイクスピア悲劇のような印象だった。
一人の美女を巡って国家が盛衰する筋書き、登場人物の性格や立場が解りやすく振り切って描かれている所、脇役の役回り、芝居がかった台詞や演技などが、どことなく戯曲的に感じられたし、誰も大望を叶えずに終わる結末もそれっぽい。
神話や古典演劇好きなので、楽しんで見られたし、所々ミュージカル調に歌い踊ったりして、3時間思いの外飽きる事がなかった。
美しく知と勇に長けた王妃パドマーワティ、誇り高く義を重んじるラタン・シン、野心に燃え欲望に忠実なアラーウッディーン。主要人物の設定も典型的で解りやすい。
インド映画は勧善懲悪物が多いのかと思っていたが、強く狡猾で欲深く残忍な悪役のアラーウッディーンが、人間らしく業深く力強く、時に身内の裏切りに孤独感を漂わせたりと、何処か悪の魅力を感じさせる描き方をされていたのが面白かった(完全に自業自得なので同情はしないが)。
アラーウッディーンの側仕えカーフールの、同性愛も感じる王への心酔など、脇役のキャラ付けも巧みで魅力的。
ビジュアル面は、役者も、舞台も、小道具も、衣装も、アングルも、ひたすら壮大で美しい!
一部、パドマーワティの故郷の森や、モンゴルとの戰シーンなど、余りにもCG臭いなーという部分はあったが。
女優さんは実在するのかと疑うほどに綺麗だし、俳優さんもワイルドなハンサムで胸筋ガッチリ、しかもわりとすぐ脱ぐ(笑)あと、結構お色気シーンというか、一々王と王妃が色っぽい雰囲気で絡んだりする。色々眼福(笑)
一糸乱れぬダンスシーンもキレッキレで、翻る衣装、交差する武器、見事なフォーメーション、全てが壮観だった。
ラストの展開は、現代日本女性として後味の良いものとは言えないが、インドの歴史や習慣を踏まえ、あくまで物語上の展開としては納得いかなくはない。
それに、名誉を重んじる戦士、乱世の肝雄、男色的表現、武士の妻の矜持など、今時の世で共感できるかはともかくとして、文化的には日本人にも充分理解しやすい内容な気がする。
しかしやはり、世間に憚る所が色々と多かったらしく、冒頭で長々と断り書きが入る。
宗教対立や殉死表現への配慮は解るが、動物は殆んどCGであり愛護されている、との但し書きは初めて出会った。動物が神様の御使いだったりする国だから、動物愛護に敏感なのかな?
そんな具合で、今まで見た洋画邦画と違う所も多く、大変興味深く楽しかった。
他のインド映画も見てみたくなったなー。