「【自分達を”捨てた”父を探し続ける息子達 父と息子の関係性を考えさせられる作品】」こはく NOBUさんの映画レビュー(感想・評価)
【自分達を”捨てた”父を探し続ける息子達 父と息子の関係性を考えさせられる作品】
幼い頃、父に”捨てられ”、母親に育てられた兄弟が30代半ばになり、父を探し続ける姿を描く中で、父と息子の関係性を実に鮮やかに描き出している。
今作を見ている途中、屡々私と父との関係、私と息子の関係が頭を過った。
良好な関係を築いていると自分では思っているが、実は実家に電話した際に話す時間は圧倒的に母親の方が長いし、父とは一般的なやりとり”会社は順調か?子供は元気か?”でほぼ終わる。
息子とは世間的に言うと良好な関係なのだろうが(同僚達の話を聞くとであるが)、それでも彼が我が家に帰省した際、会話が弾むことは稀である。
まあ、そんなものだと思っている。
この映画の父と息子の関係性はもっと複雑だ。父は二人が幼い頃、”必ず、迎えに来る”と言いながら姿を消したまま30年近くが経とうとしている。
兄、章一(大橋彰)は現在の自分の境遇は父に由縁すると思い、口では恨んでいるというが幼い頃の玩具の列車を大切にしている。
弟、亮太(井浦新:この役者さんは矢張り素晴らしい)は父が負債を残した長崎ガラス細工の会社を忙しく経営する毎日。そして、彼には離婚した前妻との間に二人の息子がおり、再婚した妻から”子供が出来た”と告げられる・・。
彼らは亮太に新たな子供が出来たことや、章一が”父を見かけた”事から父親捜しを始めるが、その過程が良い。
章一のかなり好い加減な愛すべき性格や徐々に語られる父の姿。その言葉を聞いて、父に捨てられたと思っていた二人(特に亮太)が少しづつ思い出して来た風景、そしてそれに伴い父への思いが徐々に変わっていく過程。
父と逃げたと言われていた女性から告げられた真実。そして・・。
<父である人も、そうでない人もあのラストシーンはかなり心に響くのではないだろうか、と思ったほろ苦くも沁みる作品。私は落涙した。>