「River of No return」軍中楽園 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
River of No return
所謂、華流映画のカテゴリーに入るのであろうか、しかしコンセプトは中々シビアで政治的でもある作品だ。しかしそのやりきれない不条理さはアジア映画(除日本)そのものである。
日本には耳の痛い題材である『慰安所』が舞台である。第二次世界大戦直後に中国では、国民党が共産党との戦いの中で台湾に逃げ込み、台中戦争が勃発する中、台湾側では徴兵制がとられ、その軍律を維持するために国営の風俗所が作られ、日々その軍人達の欲望を吐出させる為の行為が行なわれていた。主人公の徴兵された若者は、獰猛と恐れられていた上長をひょんなことから助けることになる。そのお返しなのか、慰安所の管理に転属された男は、その異様な雰囲気に戸惑いを覚えながらも、持ち前の真面目さで仕事に励む。話の筋は三本であり、主人公が惹かれる慰安婦の一人の旦那を殺した罪の減免で慰安に志願した女。次に主人公の親友が、家が裕福なために壮絶な虐めを受け、その中で別の慰安婦を好きになり、二人で台湾から脱獄する話。そして主人公の上長の悲しい過去である、大陸から無理矢理兵士として連れてこられ、生き別れになった母親に想いを寄せながら、許嫁と顔が似ている慰安婦を愛する話。特に上長と主人公の関係が、正に親子のような兄弟のように心を通わせ始める。しかし、運命は思い通りには行かず、それぞれの幸せ、そして現実への諦観などがどんどんと登場人物達を悲しみに堕としてゆく。それは閉じられた特殊な世界の中で、藻掻き苦しむヒューマンドラマなのである。結局は三様共ハッピーエンドに成就せず、ほろ苦いラストを向えるのだが、監督の優しさが滲み出ている部分がラストの、もし皆想いを遂げられていたらというシチュエーションでのスナップ写真や風景を流していたところである。観客の落ち込んだ気持ちをこうして救ってくれる構成は秀逸である。自分の一番の泣きのシーンは、慰安婦に裏切られた上長が逆上し殺めてしまい、軍に捕まってしまう。上長の私物を預かった主人公は、しかし、その私物である、思い出の靴や故郷への未達の手紙を燃やしてしまう。なぜならば主人公は不憫に思った故、その手紙を自分の力で故郷の母親に送ってあげると優しい嘘を上長についてしまっていたのである。もう送られることがない手紙、そして悲しい嘘。自分のしでかした罪に苛む主人公の号泣シーンには、かなり胸を打たれた。そもそもが登場人物が総て理不尽にも、人生を翻弄され、今の現実に連れてこられた悲しい立場故の悲劇なのである。アバンタイトルの『それは運命だったのだと・・・』の言葉が非常に重く、心を揺さぶられる作品である。最後に本作のテーマとは関係無いが、中国系映画の、オーバーリアクション(※所謂、ジャッキー・チェン的動作や演技)は、こういうところでも影響されていたのがコミカルだが、必要だったのだろうか、それともデファクトなのだろうか?一寸思った次第であるw