「精一杯」焼肉ドラゴン U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
精一杯
昭和44年の設定だった。
今とは何もかもが違う。
たかだか50年の間にこの国も随分と変化したものだと感慨深い。
「在日」の方の話。
大阪である設定が、不思議にも違和感がない。関西弁の印象もあるだろうか、人と人とに垣根がない。言葉はお世辞にも綺麗だとは言えない。暮らしぶりや、その環境も、清潔とは程遠い。
でも作品の人々は潔く力強かった。
心根とでも言うのだろうか…眩しかった。
日本の俳優陣も力演だったが、お父ちゃんとお母ちゃんが群を抜いてた。
こおいう類いの芝居は韓国のお家芸と呼べるのかもしれないが、それでも痛烈に突き刺さった。お母ちゃんの手に、指先に愛情が溢れてて、それに触れ涙する娘達に何の芝居もなかったようにさえ見えた。
ネタがネタだけに諸説色々とあるだろうが、そこに住み、懸命に人と向き合うドラマは見応えあった。
故郷をなくし、転々と住処と国を変え生きてきた人達。それでも家族が集う「家」というものは「居場所」であり、そこさえ奪われても「家族」という絆だけは失くさない。
そんな当たり前の事を当たり前のように叫ぶ本作品に、生き方を見直す思いだ。
煩わしい事の方が多いし、楽しい事はたまにしか訪れなくても、そこが起点だとハッキリと思える。
お父ちゃんとお母ちゃんは、これから何処に行くのだろうか?
ラストカット、崩れ落ちる「焼肉ドラゴン」に、明確な時代の移り変わりを感じ、近代化と共に失われた何かに思いを馳せる。
良い作品に出会えた。
ただなあ…大阪の役員の人達にもうちょっと普通の芝居をさせていればなぁ。
些細な箇所ではあるが、そんな所に思想の偏りも感じてしまう。
今にして思えば、極端にエキストラが少ない作品だった。意図するものがあるのかないのか…焦点がブレなかったような気もする。