セルジオ&セルゲイ 宇宙からハロー!のレビュー・感想・評価
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[佳作]カリビアン人情コメディ
冷戦崩壊後のキューバ。セルジオは大学教授の肩書はあるものの、専攻は「マルクス主義」とオワコン以下。粗大ゴミにもならないくらいに使えない。父親の旧友から送り付けられたアマ無線機でモールス通信から脱し、衛星軌道上の宇宙飛行士と通信。予算不足と政乱から帰還回収の計画がたな上げされたセルゲイ。セルジオが米国の友人に頼みNASAに働き掛けた事から、ロシアは沽券に掛けセルゲイ帰還へ一気に動く。
ソ連にハシゴを外されたキューバ。崩壊直後のロシア。大気圏外脱出が安くなった米国。この取り合わせで、人情コメディです。
役者さんが揃いも揃って良く、先ずは気に入りました。キューバの、物理的な困窮はセルジオ一家が。思想上の行き詰まりはセルジオに思いを寄せる女子学生が見せてくれます。ハバナなんだよなぁ、舞台は。行きたい。。。
テンポ良いです。誰も立ち止まらず行動起こすから。地区の公安がセルジオを監視しますが、ユルユル。最後はギャグそのものになって消えるんだが、これは、その後のキューバの隠喩って事で。
サイズ感、チカラの抜け具合、役者と脚本の良さ、絵面の力。全部揃った、俺好みの佳作。星4個にしたい気持ちをぐっとこらえた3.5、って事で。
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追記(12/4)
*貧困にあえぐ高学歴の哲学者
*違法ビジネスで稼ぐ隣人への羨望
*密造酒、密航、隠さなければならない違法アンテナ
*東側諸国の自壊
*公安による監視の目を掻い潜って通信
物語のコンテンツを書き連ねると、ちょっとしたクライムサスペンスでも書けそうな気がします。それが軽妙なコメディですよ。セルゲイは宇宙連続滞在時間の記録を、一人で更新した偉人です。彼の涙すら笑えるシーンにしてしまう、この映画。来年公開のファーストマンとの落差には気分が和らぎます。心拍数、落ち着きます。あっちは暑苦しいぞ、絶対。期待はしてるけど。
女子学生リアはシリアス感を演出するための存在でした。拍手喝采を浴びた彼女の卒業制作は、「相反する二つのものは手に入らない」、もしくは「新しい何かを手に入れるには今を破壊(それがキューバ革命だったはず)するしかない」、と言う意味。体制への批判的立場の宣言です。
不埒者をフライパンで成敗した婆さん、つかおふくろさん。どこの国のベタギャグですか?死ぬほど好きです、そのセンス!ジブリが描きそうなイタリアの肝っ玉母ちゃんですよ。
セルジオを告発できる証拠を掴んだ「監視社会の成功者」は、天にも昇る心地で衛星軌道を飛び越して行きます、と描かれます。宇宙の藻屑にでもなれ、って事ですか?うんうん、良いね、それ。
セルジオは教職を捨て「ビジネス」に手を出す事を宣言します。インテリ・マフィア誕生です。
ラストの三ヶ国語の結婚報告は、彼等の交流の継続を意味しています。ピーター、長生きしたんだねぇ。WWⅡ経験者ですよね?親子三代との付き合いとか微笑ましいです。
変化の時代を生きた家族の物語。と言えないこともないけど、あくまでもメインディッシュはセルジオとセルゲイの心の交流と、生き抜く逞しさ。肩の力を抜いて、頬も心もユルユルにして観て欲しい映画でした。
よかった
無線での通信がとても楽しそうだった。当時のキューバのような閉塞的な社会で無線で世界中と交信できたらさぞ楽しいだろうなと思った。モールス信号を自在に操るのもかっこいい。なんの制限のない自由より、そういった状況下での自由の方が自由の価値が高い。
クライマックスの宇宙からの帰還があまりにあっさりしていて肩透かしだった。
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