劇場公開日 2018年10月13日

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「奇妙なテイストのラヴストーリー」エンジェル、見えない恋人 しろくまさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5奇妙なテイストのラヴストーリー

2018年11月24日
iPhoneアプリから投稿

奇妙なテイストの恋愛映画と位置付けていいだろう。姿が見えない男の子エンジェルと目の見えない女の子マドレーヌのラヴストーリー。

姿が見えない者と目が見えない者との交流は、声のほか、触れることや匂いに頼ることになる。
ゆえに演出は繊細かつ官能的だ。
また、音の入れ方も鋭敏。
そして目に見えない存在を、映画としてどう表現するか。本作では多くの場面で、カメラがエンジェルの視点となっている。つまり、姿の見えないエンジェルの存在を、カメラがその人になることで表現しているのだ。
そうなると、カメラが写すという行為が焦点化される。
もとより、見えない対象を写しては表現できない。彼が何を見るかで彼の心情を表現しているのがユニーク。
かくして本作は視覚、聴覚、さらに画面越しの触覚や嗅覚に対し、研ぎ澄まされた表現を楽しめる。

ストーリーも、この先どうなるんだろうという興味が尽きない。ラヴストーリーであり、ミステリーであり、そしてファンタジーだ。
主な舞台となっているマドレーヌの住む洋館、家の中の調度品なども美しい。

本作、主人公2人以外の登場人物がほとんどいない。
「現実」を考えると、あれこれ突っ込みたくなるのだけれど(母親といる施設は何?マドレーヌの家族は?などなど)、そもそも透明人間という存在が現実離れしているわけで。
そういう「余計な」要素を切り捨てて、主人公2人の関係という“本質”に極端に絞り込んだ脚本は、本作においては効果的。奇妙な設定ゆえに、2人の恋愛模様をかえって際立たせることにつながっている。

最後のオチは、ああ、あの伏線はここにくるのかという驚きとともに感動を生む。

しろくま