「もっとがんばりましょう」リバースダイアリー いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
もっとがんばりましょう
上映後のトークショーでしきりに監督が連呼していた『自主上映』のデメリットの部分が匂ってくる内容であった。トークショーでの『宣伝』部門を素人にやらせた件は本作と無関係なので触れないが、今作品をどうやって世に理解して貰えるか甚だ疑わしくなる。
先ずキャストの演技の稚拙さ。台詞の棒読みは正直耳を疑う程だ。もっと適任な実力者がいた筈かと思うのだが… 主役の男優は良く見積もって所謂ジャニタレ的要素でのキャスティングは意図するところなのだろうが、その時点で本作が邦画におけるイケメン映画のジャンルと捉えるのだが、ならばヒロインが何故この娘なのかと首を捻らざるを得ない。卓球の愛ちゃんを彷彿とさせる容姿はそれ自体は親しみ易いキャラなのだが、ミステリアスな設定とは程遠く、そのギャップが狙いだったとしても、没入感を妨げる死活な問題かと思うのだが… それでも中盤迄の、男に近づいた理由の種明かしはストーリーの秀逸を感じたのだが、そこからの妹のパートが頂けない。尚且、急に前半無かったBGMが、せきをきった様に垂れ流され、しかしストーリーの陳腐さに拍車をかける効果をもたらしてしまい折角の展開を台無しにしてしまう羽目になる。それだけでも残念なのに、トドメをさすように、妹のパートははっきり言って冗長以外に見つかるキーワードがない。多分それは誰でも理解出来る心理描写である『振り』がキッチリ落とし込まれてなく、観客の思い入れを演出していない事に起因すると思う。それにこれ以上ない編集カットシーンである、ヒロインの元彼の回顧シーンや妹のストーカー男と言い、メインストーリーをバキバキに折ってしまう
ラス前の主人公元カノの登場時間の遅さも相まって、ストーリーの進ませ方と巻き戻し方のバランスの崩壊が今作品の救え無さを象徴しているように思われる。時間軸を戻すこと、その際の視点の交代というトリッキーな試みは大変興味津々だったのだが、後半力尽きて失速という幕切れに、ていかんと無感想の思いが残る結果であった。
それとも穿った見方をすれば、わざと突っ込み処満載にして、観客の話題提供を謀ったのか、あの意味があるのかないのかフォーカスの切替も想像の余地を与えただけなのか、どうでもいいことだが。
映画制作とはかくも難しきことなり…