「世界に蔓延る教育格差、揺れる心情以前に利用されていることを悲観せねば」バッド・ジーニアス 危険な天才たち かわちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
世界に蔓延る教育格差、揺れる心情以前に利用されていることを悲観せねば
世の中、カネかヒトか…そんなテーマはごまんとあるわけだが、「カンニング」からそんなことに気づかされるとは。世界で求められている「教育」とその狭間にある「格差」が、スリリングかつ大胆に展開される。
一見すると、カンニングなど笑い話に出来るような側面もある、そんな導入だとは思う。しかし、金持ちの欲望が絡むことで、金をも交じる取引へと姿を変えていく。そうなったものだから、これは命からがらのサスペンスだと植え付けられる。そんなふうに転がるもんだから、気持ち悪くも同情する自分がいる。しかも、スリルと悪しき発想は世界にゴロゴロと存在しており、この世に格差がある限り、平行線のままなのだろう。よって、勉強にも金が必要で、名誉は買って作るものという、世界の悲観を啓発するような映画でもある。その一方で、金持ちがただのヒールでしかなかったのは少し残念。友達を裏切るというより、いつ見切ってみせるのか?が描かれており、恩を仇でも返さない薄情な奴らだけに留まったことに、胸糞の悪さを覚える。それでも、映画を時間いっぱいに使いつつ、社会に意味を持たせた作品なので、ハラハラされっぱなしだった。
『ハッピー・オールド・イヤー』から観た私からすると、やっぱり起があっさりしてるな、と思う。いつの間に離陸しているような。ちょっと不思議に思う(笑)。途中で訪れるトラブルや災難を笑う様に観ていた自分は、自業自得で困っている奴に、ノートを貸すのも考えたくなる性だからなのだろう。カンニングがまかり通るのかを真義にかけた今作を面白いと思う一方、胸糞悪く映ったのは、そうした根底があるからに違いない。
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