「パーマン」レプリカズ いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
パーマン
まさに全方位的クールジャパンな造りを施しているが、とはいえハリウッドなのでラストは綺麗にランディングさせているところは物足りなさで残念である。ネットで調べてみると元々女性監督が撮る予定だったのが降りたそうである。その影響であるならば、是非当初版を観てみたかった。それ程、あの着地はないんじゃないかと思ってしまう。眼窩と眼球の間にある涙腺とおぼしきところに針を刺してそこから脳の情報を得るシーンがやたらとでてくる、先端恐怖症にはキツいカットは“時計仕掛けのオレンジ”を思いだし、一角獣は“ブレードランナー”、そして作者のフィリップ・K・ディックが著した“マイノリティレポート”でトム・クルーズがアクションしていた触れることができるホログラムを駆使しての神経インプラントや書き換え、まるでオマージュの様に近年のSF作品のシーンのオンパレードでもある。『分水界意識の合成』等の1回聴いただけでは理解出来ない難解ワードも織り交ぜながら、ご都合主義をふんだんに取り入れる様式も踏襲されていて、まぁここが評価の分かれ道かもしれないが、そこは飲み込むほか無いw 何せ天才をその能力以上にレベルアップさせるには理不尽に追込ませないとできない、まるで歯磨き粉のチューブを限界以上に折りたたんで中身を出すようなイメージで展開を強引に進めているのも、ご愛敬なのかもしれない。しかし数多く散りばめられたツッコミどころ満載のシークエンスの中でも、特に奥さんのあっさりした自身の出自の飲み込みにはどうしても此方が飲み込めないのは困ったものである。ことさらあげつらっていたら今作品を愉しめないのは重々承知なのだが、やはり積み重なると渋滞を引き起こしてしまい、益々ラストを期待してしまいがちになってしまうのだが・・・ さぁ、この継ぎ接ぎだらけの大風呂敷をどうやって折りたたむのか、生温いエンディングにはするなよ、そこは救いようのない胸クソエンディングを期待していたのだが・・・ 結局、パーマンのコピーロボットを使い、ましてやパーマンのラスト宜しく、現実はコピーロボットに任せるんかいwというオチに、尋常ならざるモヤモヤ感に打ち拉がれながらのエンドロール・・・
家族一人がコピーを作れない設定や、信頼していた仕事仲間の裏切り等、幾らでもその伏線の回収のアイデアはあった筈なのにと残念でならない。気絶させられた上司が握りしめていた毒薬入の注射も回収されず、ドローンを操作するほどの手先の器用さをアピールしていた息子のコピーはすっかり不器用になってしまったカットも、フリだけ振っておいて生かされないのは勿体ないのではないだろうか。その他、3人もコピーを作ってしまうと言う前代未聞の神の所業を数日間で仕上げてしまうぶっ飛び感と、3人それぞれの関係者(先生や病院、友人等)にアリバイ造りをする件との余りにもギャップの違いをもっと上手く表現出来ていれば、その落差に面白さが伝わると思うのだが。余りにもアッサリしすぎているし、折角バッテリー窃盗というフリがありながら、警官を後で何かのシークエンスで登場させることでもっと重層的な回収に仕上げることが出来たのではと思う。
色々と重箱の隅を突いてしまったが、それだけSF作品としての矜持を持てる可能性を秘めてる作品であり、人間を造ってしまうという壮大な展開を拡げられる内容だっただけに、乱暴な言い方だが“陳腐”に方向を捻じ曲げてしまっているのが勿体ないと口惜しい限りである。やはりキアヌ・リーヴスは“ジョン・ウィック”での評価しかないのだろうか・・・