ラジオ・コバニのレビュー・感想・評価
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全員が敗者?
破壊しつくされたコバニの街の全景をドローンが映し出す。衝撃です、この景色。原爆や津波で破壊された街の景色を、知っているはずのに。
私は、この街で起こった事を何も理解していなかった。ISの残虐性は既知として、双方が街(人命を含み)を破壊し合った結果がこれなのだと言う事実を知り、言葉を失う。
廃墟から掘り出される亡骸とは別に、頭部が放り投げられる。これが復興の現場なのか?
コバニ奪回後、国境の鉄扉を開き女子供老人が街に戻って来る。床屋では兵士が敵少年兵を殺した事を述懐する。別の兵士はマイクの前て楽器を奏でながら歌う。少しずつ復興する街、再開された店先でナンを買い求める少女。誕生パーティーでバタークリームのケーキにナイフが入る。そうしたシーン一つ一つに、涙が滲むのは何で?
勝者も敗者もいない、全員が敗者だとキコは言う。本当に正しいか、それって?
捕らえられた敵兵士は、貧しかったから兵士になったのだと主張するが、短時間の尋問が、彼等の大義がまやかしであることを暴露する(という作りになっている)。
こんな状況の中で、希望、勇気を忘れなかった君達こそが勝者だと、この作品は伝えてくれるが、恐らく、そんな言葉では言い切れないほどの深い何かが、コバニに生き残った人々の顔は語ってくれる。
普通女子の戦い
なんとも力強いドキュメンタリーでした。
一番印象に残ったのは、主人公ディバロンが普通の女の子っぽかったことです。友だちと女子トークで盛り上がったり、フェイスブックで出会いを探したり(?)して、東京の女子大生であっても違和感ない雰囲気です。
そんな普通の彼女がラジオを始めたことに、人間が内包している精神力の凄さみたいなものを感じたのです。
序盤、ボロボロに崩壊したコバニをじっくりと映します。掘り起こされる遺体の数々には思わず目を覆いたくなる。惨たらしいし恐ろしいしけれど、これが続くと恐怖を感じるのがキツすぎて麻痺してくるかもしれない、とも思いました。コバニで生きるのは本当にキツすぎます。
そのような中で、自分がこの世界のためにできることを、普通女子・ディバロンが実行したという事実は、希望を感じました。
個人的には、ドキュメンタリーは劇映画とは違いあれこれ考察できないことが多く、本作もそうなのですが、素晴らしい体験でした。
『ラッカ〜』もそうですが、シビアなドキュメンタリーを体験できたことは、本当に良かったです。
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