劇場公開日 2018年6月8日

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「胸が締め付けられる」万引き家族 ぴーたさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5胸が締め付けられる

2018年7月16日
iPhoneアプリから投稿

私は裕福でもなく、かといって貧困でもない
至って中間、一般的な家庭で育ってきたけど
これからのことを考えてると
いつ社会的に弱い立場になるかわからない。
高学歴でもないし派遣社員で収入も安定してないけど
実家暮らしだから食べるに困る訳ではない。
けれど実家は賃貸で親が亡くなれば
今の生活は一変すると思ってて、
このままじゃいられないのは薄々思ってる。
そうなったときに、
自分の力でなんともならなくなったら
きっと簡単に落ちると思う。

この映画に描かれている人達と比較してしまえば
恵まれてる状況だと考えられるかもしれない。

様々な社会問題を詰め込んだ作品で、
世間が思う型にはめた幸せに押し込まれた
ばらばらにされた家族。
それは本当に本人達にとって幸せなのか?

正しい正しくないで言えば
正しくないのだけど、そうする形でしか
生きられなかった人もいる。
それを世間から見たら甘え、自己責任と言う。
政治家は票を得るための大多数の人のためにしか
政治をしない世の中。
誰のための政治なのか?

最近、バラエティ番組でいかに
外国からみた日本が素晴らしいか、という番組が
増えたような気がして、違和感があった。
たしかに素晴らしい面もあるのだけど、
綺麗な部分しか見せないようにしている感じ。
日本人が自作自演で日本の素晴らしさを
日本人に思い込ませようとしてるような。
この映画が国際的に評価を得たことで、
なんとなく安心感がある。
だって、風景だけで見たらこの映画に
(一般的な)日本の素晴らしい風景なんて殆どない。
散らかった家、風俗、犯罪、淀んだ空気感。
その中で際立つ、歪な家族のつながり。
綺麗なものの裏で、こういう世界がたしかに
存在してて見ぬふりされるまま
見つかったらマスコミに好き勝手言われ、
世間の冷たい目と本当の事を知ろうとしない世の中。
実際に報道されたニュースの中に、
どれだけ本当のことがあったんだろう。
どれだけの本当のことが隠されてしまったんだろう。

そして私も、どれだけ見ないふりをしているのか。
まだ自分は大丈夫だ、
なんて言い聞かせながら
いつ自分がそうなるかもしれない不安の中で
抗いながら比較することで安心してしまう
自分の汚さ、ずるさ。

そういうことを考えさせられる作品でした。

ぴーた