「演技と演出と美術で感じさせるリアリティー」万引き家族 kazzさんの映画レビュー(感想・評価)
演技と演出と美術で感じさせるリアリティー
安藤サクラだ。
少女を後ろから抱きしめ、頬擦りする暖かさ。
下着もあらわな姿でそうめんをすすり、それを見たリリー・フランキーが欲情するより先に男を押し倒して上になる発情。
極めつけは、池脇千鶴捜査官の前での涙。
「誰も知らない」の母親YOUは、いわゆる男依存症で、子供たちにいい子でいるように言いきかせて男の元に行ったまま放置する。
たまに帰ってくるのだが、そこでは思いの外子供を可愛がる。
母親と子供たちがふれあう場面は前半の短い間しかないが、そこでは子供を愛する母親ぶりが描かれている。
後半で、置き去りにされても尚、母親を慕う子どもたちの姿から、
可愛がったり放棄したりする母親の身勝手さの罪深さが強調されていたように思う。
「万引き家族」の母安藤は、やはり社会的にはずるい生き方をしているのだけれど、肩寄せあって生きる疑似家族の関係を大切にしている。
子供が実の親から虐待されるなら、その親から引き離して自分が愛してあげたいと思う。
父フランキーは、それほど意思が強いわけではなく、むしろ子どもと同じ立ち位置で「仲間」くらいの意識なのではなかったか。
少年に「父ちゃん」と呼んで欲しがっている子供オヤジだ。
「誰も知らない」では母YOUの目線は描かれていない。
一方、「万引き家族」では、母安藤の「子どもから選べない実の親よりも、自分で選んだ親の方が良いのだ」という意識が明示されている。
しかし終盤、刑務所に面会に来たフランキーと少年に向かって、私たちじゃあダメなんだよ(実の親でなければ?)と、悟ったような台詞を安藤に言わせるのは、家族に血のつながりは必要か?という問いかけが主題だと思わせておいて、梯子を外されたようだ。
他の出演者たちもすべからく素晴らしい。
樹木希林、柄本明は相変わらず見事。
リリー・フランキーは、どこに行っても素の演技で、是枝演出に合っている。
美術も素晴らしい。
あの家族の住まいのリアリティー。
少なくとも外観はロケーションのようだから、探したスタッフもたいしたものだが、家の中は、実際にあのような家族がいたかのようだ。
強い絆で結ばれていたかに見えた疑似家族は、結局バラバラになり、それぞれが信じてしがみついていた何かは、消え去ってしまう。
なんとも残酷な結末は、是枝監督のリアリストぶりがなせる業か。
「誰も知らない」のラスト、あの子達、そして女子高生は、この後いったいどんな人生を送っていくのだろうかということが、暫く頭を離れなかった。
「万引き家族」のラスト、少年と少女に待ち受けているのは悲惨な未来しか想像できない。
それが、無性に悲しく、やりきれない。
最後に、松岡茉優の女優開眼を高く評価しておきたい。
映画館にて観ましたが、あまり印象が良くなく、レビューしようとも思えませんでした。(ジョーカーと同じく)
安藤サクラさん、素晴らしい❣️に尽きます。外国の有名な女優さんが、涙のシーンを自分も真似する、とおっしゃっていたとか。
生まれるところ親によって子供の運命が左右されほぼ一生が決まるので親になってはいけない親の元に生まれたら悲惨ですね。本作束の間だから成り立ったかもしれませんが、子供は成長して知恵がつきますから、幼い頃のようにはいかず、大人より道理に沿う考えが強くなるかと思うので大人に疑問も持つのも当たり前。この家族が好きでないので本当子供の行く末が気になりました。あの小さな女の子、なかなか名子役らしく本作後、いろいろと見かけました。