劇場公開日 2018年6月8日

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「文句無しのパルムドール賞!」万引き家族 サウスポーさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0文句無しのパルムドール賞!

2018年6月9日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

悲しい

難しい

自分は今「万引き家族」を観た1時間くらい経過してこのレビューを綴っていますが、
あまりにも頭の中がこの映画の場面一つ一つが走馬灯のように駆け巡っているので、
何から話したら良いのか、
どう言葉を作って良いのかわかりません。

それだけこの映画に感動出来たと思って頂いて結構です(笑)
それでもその中から、頑張って言葉の欠片を拾い集めながら記載していこうと思います。

万引きで生計を立てている家族がいて、父親と息子がある冬の寒い日に帰りの夜道を歩いていると、部屋に一人でいる5歳の女の子を見つけ、家に連れていく。
そこから物語は始まります。

物語自体はキャストが自然な演技をすることであたかも実際に起きてるかの如くリアルに見せるモキュメンタリー風な演出で見せています。
これは、是枝監督が「誰も知らない」という柳楽優弥主演の映画で見せた演出と同様です。
そしてもう一つ、子役の演技を上手く見せる演出も行われています。
これはどのような手法で行ってるかは解りませんが、先程の「誰も知らない」と僕の好きな「奇跡」という映画でも行っていて、恐らく是枝監督の最も得意且つ独特な演出技法だと言えるでしょう。

この方法で演出してくれた結果、本当に子役の演技には引き込まれました。特に女の子を演じた佐々木みゆちゃんが映る時は何回も涙目になりました。
そして、演じた女の子のキャラクター像を観て考えさせられました。
少しばかりネタバレしてしまいますが、この女の子には虐待の跡がありました。

これについて、最近似たような事件があったと思います。
女の子を親が虐待した挙げ句に亡くなってしまうという事件。
その子も、映画の女の子と同じ5才でした。
観ている時に凄くこの事件を思い浮かびました。
映画に出てくる親も無責任で最低な両親で、その行動を観るや、「こういうやつがあの事件を起こしてしまうんだ」と悟りました。
作品がその事件の直後に公開された事を考えると、非常に複雑な気分です。
これについて監督はどう感じたのかも気になります。

こうやって絶賛はしているものの、前半部分は家族の日常部分を映しているのですが、ここまで引き込まれていませんでした。しかし、決定的に引き込まれたのは後半部分の演出です。
ワンカメでリリー・フランキーや安藤サクラのドアップで映し出されます。
邦画ではよくある手法なのに、キャストの演技の良さも相まって、気が付いたら釘付けになってる自分がいました。
単純な演出でありながら本当に素晴らしかったです。

上でも記載しましたが、キャストも非常に素晴らしいです。
主演は恐らくクレジットが一番上に来てるリリー・フランキーだと思います。
ですが個人的には、主人公はこの家族6人全員だと思います。そして全員が演技良かったので、もし僕がどこかの映画賞の審査員ならこの家族キャスト全員に主演俳優賞を贈りたいです!

今年観た映画で、そして僕が今まで劇場で観た映画の中で、こんなにも映像に釘付けになった映画は他にありません!

カンヌ国際映画祭で最高賞を獲ったのも充分理解が出来ました!
改めて言いますが、
是枝監督、本当にパルムドール賞受賞おめでとうございます!

余談ですが、映画というのはあくまでも娯楽作品だと思っています。
ですので、あまり娯楽に長けてない社会派の作品ばかりが日本の映画賞を受賞したり雑誌のランキングに入れる事に前々から疑問を抱いていました。
それは、社会派のものが作品として全部が良いとは思わないし、演出面やカメラワークが良くない作品も多いからです。

しかし、今回の「万引き家族」のように演出やキャスト面でも良い要素があると納得出来ます。

何が言いたいのかというと、
話の良さだけで無く、演技、カメラワーク、音響、演出でも良い、こういった作品が評価されてほしいということです。

サウスポー