「静かに命を終える父親が最後にした事」ガンジスに還る bloodtrailさんの映画レビュー(感想・評価)
静かに命を終える父親が最後にした事
映画大国インドの底深さを感じた優良品でした。「解脱の家」から旅立つ老父が息子の魂を解き放つ話。最後が洒落てて予想外だったが、泣き笑いのオチは浸透圧高くて良かった。
インドだって近代化の波は押し寄せてます。「バラナシで解脱の時を迎える」事も、万人の理解と協力が得られる儀式では無い事が、婉曲的に表現されています。父親を見送るのは当然の務めと考える息子と、職場のギャップ。息子が因習的な家長制度の中で、いまだに父親による精神支配に囚われていることを、緩めに表現する冒頭部が、最後のオチに繋がりますが、「いやになるくらい濃ゆい展開」じゃなく、笑える展開でサラっと流して行くところが好きです。
2週間しか滞在できない?その間に解脱できなければ、どうすれば良いん?と、心配になりましたが、そんな抜け道がある訳ですよ。納得。んじゃ、ヴィムラさんは、どんだけの名前を使った訳????
映画として驚いたのは、「演技に見えない、ロケに見えない、創作品と思えない、自然さ」。老父役のラリット・ベヘル、宿主のアニル・ラストーギー、ヴィムラ役のナブニンドラ・ベヘルのお三方には、ただただ魅せられました。私たちには馴染みの薄いヒンドゥーの世界観に引きずり込まれる、演技とは思えない演技には、どんだけ場数踏んでんだよ、って思う。
踊るマハラジャじゃ無いインド映画も、もう少し多く、日本でも見られるようにして欲しいです。いや、踊る方も好きなんで、そっちの方も宜しくお願いします。
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