劇場公開日 2018年10月27日

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「生の最期の締めくくりを考える」ガンジスに還る ローチさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0生の最期の締めくくりを考える

2018年11月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

知的

夢で死期を悟った父が息子の付き添いでインドの聖地バラナシを訪れ、死期を待つ物語。何事もことごとしく起こらず、静かに死への時間を過ごす。27歳でこんな老成した作品を作る監督は何者なのだろうと思う。

父と働き盛りの息子、そしてさらにその娘の世代間の違いも反映されている。ヒンドゥーの死生観にどこまでも忠実な父、インドの経済発展を象徴するかのように仕事に追われる息子、そして自立して自分の道を自分で決めようとする新世代の女性の長女。新世代よりの年齢の監督がむしろ、インドの伝統的価値観に寄り添っているのが印象的だ。

バラナシにはこのような死を待つためのホテルがいくつもあるらしい。死という生の最期をどのように締めくくるかは、全ての生きる人がいつかは考えなければならないことだ。この映画の父のように良い死を迎えるためには、きちんと今の生を全うしなければ。そんな気にさせる映画だ。

杉本穂高