「喪黒福造に代わってダイアナが突きつける“ドーン‼︎!!”が切ない、DC版『笑ゥせぇるすまん』」ワンダーウーマン 1984 よねさんの映画レビュー(感想・評価)
喪黒福造に代わってダイアナが突きつける“ドーン‼︎!!”が切ない、DC版『笑ゥせぇるすまん』
ダイアナが勤めるスミソニアン博物館にやってきた新任の考古学者バーバラ。見た目が地味で控えめな性格のバーバラは美しくて強くて理性的なダイアナに憧れを抱くようになるが、鑑定のために彼女の元に運ばれてきたラテン語の文字が記された謎の石が彼女とダイアナが胸に秘めた願望を全く思いも寄らない形で現出させてしまう。そんな折現れたのは派手なテレビ広告で石油採掘への投資を謳う実業家マックス・ロード。スミソニアン博物館への寄付を申し出るマックスはその石の威力を使ってある野望を実現させようとしていた。
タイトル通り舞台は1984年。80年代を舞台にした映画では当時の音楽や映画、ファッションやグッズがこれでもかとぶち込まれるのが常ですが、本作にはそんなサービス精神は控え目。むしろ何かと引き換えに望みを叶えてくれる謎の石を巡る物語が拍子抜けするほどにアナクロで荒唐無稽で、ほぼDC版『笑ゥせぇるすまん』。
しかし藤子不二雄Ⓐ先生が付けそうなどエゲツないオチの代わりに用意されるのは、1984年当時に蔓延していた能天気で軽薄な幸福感の裏で加熱する米ソの対立、宗教間の摩擦、貧富の格差拡大といった確かにそこにあった危機に対して人類が何をしなければいけなかったかを喪黒福造の代わりにダイアナが突きつける“ドーン‼︎!!“。何かを手に入れた喜びとそれを失う悲しみは決して等価ではないことをまざまざと見せるクライマックスに涙が溢れました。これは確かにこの時期に公開しなければいけなかった作品です。
予告にあるような派手なアクションシーンは確かにありますがそれはあくまで添え物。前作とは全く異なるアプローチでワンダーウーマンを更に高次の存在に導いたパティ・ジェンキンス監督の手腕は見事。劇中で一瞬だけ登場する眼差しにあれ?と思ったアラフィフの為だけに用意されたエンドクレジット中の回答も恐らくは彼女のこだわり。さらにもう一回泣けますので余計な情報は頭に入れないで鑑賞するのが吉です。