劇場公開日 2020年12月18日

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「やがて終わりがくるかもしれない…時を超えた愛を描く恋愛映画!!」ワンダーウーマン 1984 バフィーさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0やがて終わりがくるかもしれない…時を超えた愛を描く恋愛映画!!

2020年12月18日
PCから投稿

アメリカでは、12月25日に一部劇場と合わせて、HBO Maxでの配信に踏み切ったことで、情報が漏れる前に、劇場公開予定の国に関しては、前倒しで公開されることになった為、日本は1週間早く公開されたわけだ。

とは言っても、新型コロナウイルスによって当初の予定よりは大きくズレてしまっていることと、ライバルのマーベルが今年中の公開を見合わせ、2020年は作品ゼロという状態の中で、ギリギリ年末公開に踏み切るのには、ワーナーとDCの中でかなりの会議が重ねられたことが想像できてしまう。

2020年中に公開したかった理由としては、まだドナルド・トランプが大統領の間というのもあったかもしれない。というのも今回のヴィランとして登場するマックスウェル・ロードは1987年に初登場したキャラクターであり、そのモデルは、様々な人物に着想を得ていとされているが、1980年代のトランプもそのひとりなのである

『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』のビフや『グレムリン2 新・種・誕・生』に登場したダニエル・クランプもモデルは当時のトランプであり、テレビや映画に登場するなど露出度が高いセレブで、89年にはボードゲームが発売されたほど。80~90年代の映画やドラマ、コミックに登場する実業家、資産家などのキャラクター造形には、いくらか影響を与えている。

そんなトランプがモデルとなっているマックスウェル・ロードではあるが、あくまで80年代のトランプであって、大統領としてのトランプがモデルとなっているわけではないのだが、劇中に登場するスチュワート・ミリガンが演じる大統領がトランプにそっくりなのだ。84年の大統領はロナルド・レーガンであるため、レーガンには似ていないのだ。悪意があるというかメタ的なネタかもしれないが、80年代のトランプが現代のトランプを従わせている構図は、なかなかおもしろいものがある。

トランプの伝記映画を作るとしたら、スチュワート・ミリガンが良いのではないだろうか。

監督は前作に続き、パティ・ジェンキンスが務めているが、今回は脚本としても参加していることで、女性ならではの繊細な視点が反映されているからか、時を超えた恋愛映画としての側面も持ち合わせている。

アメコミ映画ということを忘れてしまうほど、アクション・シーンが意図的に抑えられていて、その代わりにロマンチックなシーンや演出があることで、ダイアナが復活したはずのスティーブか世界かの選択を迫られるシーンは、感情移入しないではいられない。

ダイアナのたったひとつの願いであったスティーブを失うぐらいなら、力を失ってもいい、自分の身のことだけなら、それでもいいが、世界を救うためには、力を捨てるわけにはいかないという究極の選択を乗り越えたダイアナの成長も描かれる。

生身の人間でしかないスティーブが、スーパーパワーがあるということに関係なく、ひとりの女性としてのダイアナを守ろうとする様子や自分の幸せよりもダイアナの世界から与えられた役割を諭すところは、ワンダーウーマンよりヒーローらしいと言うか、だからこそダイアナはスティーブが好きで、スティーブこそが唯一の相手だと感じているところがここまで自然に伝わってくるのは、完全に恋愛映画だ

1984年という時代設定は、ひとつは単純に、監督の生きてきた時代だからこそ表現しやすいということ。

あと『ジャスティス・リーグ』後の世界を描くには、今後のDCエクステンデッド・ユニバースの動向がわからないということはあったからではあるが、産業や文化など西洋文明の絶頂期であり、未来への希望と不安が渦巻いていた時代とワンダーウーマンがどう関わっていたのかを描きたかったという点もある。

今作は、70年代のドラマシリーズへのオマージュもあることから、ドラマシリーズとDCエクステンデッド・ユニバースの間に何があったのかを描きたかったというのもあったのだろう。

神であるダイアナが相手を殺すという選択をとらずに、あえて心情に訴えかけて、人が人を助ける展開こそが、ダイアナが人類を助けることへの決心が強固となり、戦争やテロを経験した現代でも人類を見捨てないでいてくれているという一種の回答ともなっているのだ。

バフィー吉川(Buffys Movie)