劇場公開日 2018年9月28日

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「意義ある王道ラブコメだが、これってアジア風? ハリウッド向け?」クレイジー・リッチ! 近大さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5意義ある王道ラブコメだが、これってアジア風? ハリウッド向け?

2019年2月13日
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鑑賞方法:DVD/BD

笑える

楽しい

幸せ

いつにも増して人種の多様性が叫ばれる昨今のハリウッド。
それを象徴するかのような本作。

ハリウッド映画としては『ジョイ・ラック・クラブ』以来25年振りに主要キャストがアジア人。
その設定と新鮮さがウケてか、全米大ヒット。
今後のハリウッドの新たな金脈を振り当てたような、話題と意義を含めた大ヒットとなった。

ニューヨークで産まれ、経済学の教授として働く中国系アメリカ人のレイチェル。
恋人ニックの親友の結婚式に出席する為、彼の故郷シンガポールへ。
そこで驚くべき事実を知る。
実はニックは、シンガポールでは知らぬ者は居ない超大金持ち一族の御曹司だった…!

何もかも常識外れ、タイトル通り“クレイジー”なリッチさ、ゴージャスさ。
それ故のヒロインの価値観の違いや超格差ギャップ。
乳母を恋人のおばあ様と間違えたり、クスクス絶妙な笑いを生む。

しかし、突然お姫様になった夢物語ではない。
レイチェルに次から次へと試練が襲い来る。
ニックはイケメンで優しくて、理想の王子様。
シンガポール中の女性の憧れであり、誰もが彼の恋人の座を狙っている。
そこへ突然現れたレイチェルは、言わば女性たちの敵。何、あの女!?
元カノやセレブ女子たちの嫌がらせの連続。
ベッドの上の“あれ”は、嫌がらせを通り越してもはや戦慄!

レイチェルの最大の難敵は他でもない、ニックの母親。
家柄を重んじ、シングルマザー家庭のレイチェルの育ちや“中国系アメリカ人”であるレイチェル本人に対して快く思っていない。
と言うか、あからさまに冷たく、嫌っている。
果たして、この厳格な母親から交際を認められるのか…?

船や飛行機を貸し切り、豪遊やパーティー三昧。
半端ないリッチ振りには暫し金持ち気分に浸らせてくれるが、何処か滑稽で呆れ、辟易もする。
我々もヒロイン目線で金持ち連中の馬鹿さ加減を目の当たり。
金持ちであれば金持ちであるほど傲慢。

恋人の母親は何故頑なに交際に反対するのか…?
冒頭、母親が昔あるホテルで受けた人種偏見。
偏見が偏見を生む。

親友の結婚式やクライマックスのプロポーズ・シーンなど、ロマンチック。
一見明るく楽しい作品に散らばる、人種の問題や文化や生まれや価値観の違い。
それらにめげず、果敢に挑み、恋人との愛を成就させようとするヒロイン。
その姿に万国共通、共感必至。
王道のシンデレラ・ストーリー的ラブコメ。

主演のコンスタンス・ウーは飛びきりのアジアン・ビューティーではないが、チャーミングで魅力的に見えてくる。
イケメン男性陣はセクシー筋肉美をやたらと見せびらかせてこれと言った個性に欠けるが、ヒロインの親友役のオークワフィナは好演で快演。
こうして改めて見るとなかなかキュートでもあり、親しみ易さから、今後ヒロインの良き親友という役回りが増えるだろう。
でも、キャストで誰よりも存在感を放つのは、恋人の母親役のミシェル・ヨー。
時にヒロインの最大の障害であり、時にワチャワチャ騒がしい本作をビシッと締めてくれる。

誰もが見れ、素直に楽しいのは楽しいが、全米での大ヒットほど響かなかったのも事実。
と言うのも…

キャストがアジア系というのが本作一番の見所だが、話は特別アジア系でなくとも成り立つ。
平凡なヒロインとイケメンリッチ王子様の恋。
言ってみれば日本の少女漫画実写、話自体はズバリ『花より男子』まんまである。

アジア系で固められたキャストだが、そのほとんどが“○○系アメリカ人”。
一応物語上意味ある設定なのだが、生粋のアジア人ではない。
このキャスティングに関しては一部論争も巻き起こしているとか。
アジア系キャストも中国系とか台湾系とかシンガポール系とか偏っている。
他のアジア諸国、韓国や我が日本は蚊帳の外。
どうせなら生粋のアジア諸国のキャストを集めて、それで見たかった気もする。
ハリウッドが手掛けたアジアン・ムービーと謳っておきながら、実際は、アメリカ人に向けた、アメリカナイズされた、アジア風ハリウッド・ムービーなのである。

再三言うが、楽しい娯楽作。
ベストセラー小説が原作。
全米大ヒットを受けて、続編製作が決定。3部作構成になるとか。
今回はプロポーズまで。
婚約中、結婚、新婚、子供誕生まで、人種の問題や文化や生まれや価値観違いの超格差ラブストーリーはまだまだ続けられそう。
願わくば、次はもっとアジア色を打ち出して欲しい。

近大