「レディ・ガガの、大観客前歌唱部分からが、真の本番な作品」アリー スター誕生 ソビエト蓮舫さんの映画レビュー(感想・評価)
レディ・ガガの、大観客前歌唱部分からが、真の本番な作品
最初の20分は、本当に鑑賞が辛くて、何度も離脱しそうになった。
なぜなら、ジャックと呼ばれる有名な男性ミュージシャンが登場し、薬物中毒者で、アルコール依存症で、下心しか無さそうなオジサンで、
好きになる要素が一つも無いからだ。
こりゃひでーなと。いかにも生理的に、受け付けないタイプの映画じゃんと思い、
サブスクでみていたが、何度も再生停止ボタンに指がかかる。
その後、アリーというヒロインも登場し、
普段はバーのウェイトレスでバイトしてます風の、
ドラッグバーでこっそり歌ってます風な女性、
ようするに、売れない歌手なわけだが、
眉毛があるのに、眉毛を全部塗りつぶし、細い黒テープで眉毛を作り、舞台に上がるのだ。
なんかもうそれが、眉毛を描かれた犬みたいに滑稽で、
イモトアヤコの細眉バージョンじゃねーかと爆笑してしまい、
再び再生停止ボタンに指がかかるが、
アリー役のレディ・ガガが、ちょろっと歌い始めて、停止ボタンにかかった指が、ピタっと止まる。
「へええええ、レディ・ガガって歌上手いんだね」
と、生まれて初めてレディ・ガガの印象が、奇抜な衣装のパフォーマーから、
歌上手いガチ勢、に書き換えられる。それ位、レディ・ガガのことを、よくわかっていないのだ。
もうちょっと我慢して観るか、、、と継続鑑賞を続けると、
アリーが大観客の前に放り出され、熱唱を始める。
ここまでが大体最初の20分。
そこで初めてレディ・ガガの本格的な歌唱力を浴び、
「なにこれ、めっちゃええやんかああああああ!!!」
と物語に没入成功。
あとはもう、レディ・ガガの独壇場。歌うたびに、ええやんええやんのお祭り参加モードになるのだ。
私は、レディ・ガガを正直、甘く見てた。
世界的スターというのは、こういう事なのかと学習した。
いかにも自分にはつまらなそうな、嫌いな感じの映画だなと、
鑑賞を何度も脱落しかけたが、
レディ・ガガの歌声で180度、印象が一変し、見続けられる映画になった。
我慢して良かったと思った。
ストーリーが進むにつれ、やっぱりドラッグとアルコールで、
クズな顔がすぐ出るジャックは、相変わらず嫌いだなと思っていたが、
物語の本筋である、
未来が見えず、暗闇の中にいるヒロインに、主人公が光を差し伸べ、
それによってヒロインが輝きはじめると、逆に主人公に暗雲が立ち込みはじめ、
ヒロインが光の中に包まれると、主人公が暗闇の中に吸い込まれていく、
何度もリメイクされてきた作品の構造的な強み、
すなわち、鉄板要素がモノを言いはじめる。
いわゆる、日本映画でいう所の、忠臣蔵のような勝ち確必勝パターンだ。
全体を通して歌唱曲部分が魅力的な作品であり、
それを担っているのが唯一無二のレディ・ガガであり、
ある種のミュージカル的映画のような起承転結具合で、
心にグッとくるものが最後に来る。
ただただ、レディ・ガガって、やっぱすげえんだなと改めて感じられた作品だった。