劇場公開日 2018年12月21日

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「初監督作は無難な仕上がり」アリー スター誕生 うそつきカモメさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0初監督作は無難な仕上がり

2021年8月11日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

あのレディ・ガガ主演で、人気俳優のブラッドリー・クーパーが監督そして主演。名作『スター誕生』のリメイク。これだけのフックが揃っていながら、正直な感想は「ふつうだな」と。もちろん十分に楽しめる内容だし、特にレディ・ガガの歌声は理屈抜きに素晴らしい。軽く涙が出たほどだ。

ただし、『グレイテスト・ショーマン』でも同じように涙があふれるシーンはあったし、『ラ・ラ・ランド』のほうが大きな感動を味わえた。それに比べれば、いたって平凡な印象で、悪い映画じゃないがそれ以上でもない。

2時間半の上映時間は、後で知ってびっくりしたほど長さを感じなかった。むしろ、2時間以内で終わったように感じたほどなので、歌のシーンを見せる演出がうまかったのだろう。退屈なら、もっと長く感じたはずだ。

ブラッドリー・クーパーは、自分が監督であり、プロデューサーも務めている。自分を客観視できたのか疑問だ。ジャック役は、もう少し感情の起伏を激しく演じてほしかった。アリーの才能を見出し、同時に恋をして、彼女がスターへと昇り詰めていく姿を間近で見つめながら、自分はアルコールに溺れていく。そんな、難しい役で、なおかつ演奏シーンもたくさん用意されている。その割に、ひどくフラットで、誰からも嫌われないような性格に演じている。

『二ツ星の料理人』では、憎たらしいほどに自信満々で、女にだらしなく、キッチンに君臨するシェフを演じた。この時の方が、演技の幅が大きかった印象だ。あれぐらい出来たのなら、この映画でのジャック役はもっと起伏の激しい演技に出来たはずだ。マイナスの感情をこのキャラクターに抱かせたくなかったのだろう。そうだとしか思えない。そして、出番が多すぎる。彼が監督じゃなければ、出演シーンは大幅にカットされたんじゃないかと思う。

レディ・ガガは、まさに体当たりの演技で、恥部もさらけ出す勢いで演じている。もともと、歌で成功する時に、自分をプロデュースする能力にたけていたのだから、見せ方が上手い。あえて弱点を言うなら、新人で自信なさげなアリーに、初々しさがあまり感じられないことぐらいだろうか。これが、他の女優だったら(ましてや発掘された新人だったとしたら)、どれほど歌が上手だったとしても、グラミー賞を受賞するシーンで、逆に嘘くさくなる。

スコア、もしくは使われた歌で、好きになった歌は残念ながら無かった。この先10年は歌い継がれるような名曲の誕生には結びつかなかったようだ。さほど話題に上ることなく、埋もれていってしまうのなら、残念だ。しかしその程度でしかないと、言ってしまえばそれだけの映画だ。

2018.12.23

うそつきカモメ