劇場公開日 2018年12月21日

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「ちょっとペンチを貸してくれ」アリー スター誕生 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0ちょっとペンチを貸してくれ

2018年12月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

萌える

 容姿に自身がなく、顔で拒否られるって・・・つけ眉毛のせいじゃないの?と、最初からツッコミ態勢で鑑賞してしまいましたが、細かなところで音楽映画の素晴らしさを堪能することができました。さすがに全体的にはジュディ・ガーランド版『スタア誕生』(1954)もバーバラ・ストライザンド版『スター誕生』(1976)も観ているので、男が落ちぶれていく展開は知っていた。言ってみれば、ストーリー的には安心して見れたのです。

 細かな点でちょっと使えそうな、また今後流行るかもしれないペンチでギターの弦を切るエピソードがお気に入りです。ギターを弾いたことのある人しかわからないかもしれないのですが、古くなった弦の処分、分別は困りものなのです。ゴミの分別がうるさくなってからは、細い弦は丸めて、太い弦はペンチで切り刻んで空き缶の中に入れてゴミ出しする方法をとっています。そんな処分に困る不要弦を指輪にしてプロポーズするという画期的なアイデア!世の男性ギタリストたちが真似すること間違いなしと思えるシーンでした。

 もうひとつ、音楽映画特有のものですが、あり得ないやろ!とも批判される重要なファクターがあります。古くは『ベニイ・グッドマン物語』(1956)で、ライオネル・ハンプトンがいきなり乱入してセッションを始めるシーンだとか、『スウィングガールズ』(2004)で遊びまくってた女の子がいきなり楽器店で管楽器を購入して主人公のバンドで演奏するとか、『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)ではフレディが歌う「Doing All Right」にいきなりハモるブライアンとロジャーだったり、練習してないのにできるわけないやろ!と感じるシーンが必ずあるものなのです。このレディー・ガガ版でも、酔っぱらったジャックがアリーの口ずさんだ曲を次の日のコンサートでいきなり編曲し、完成された曲としてアリーとデュエットするという凄技がありました。こういう「嘘やろ!」的なエピソードが音楽映画独特の手法(?)として存在しています。ミュージカル映画ではもっとあり得ないシーンがいっぱいありますので、元々はミュージカルから来てるのでしょうね。

 さて、このレディ・ガガ版というより、ブラッドリー・クーパー版といった方がいいかもしれない今作品では、聴力を失いかけて酒に溺れる男を好演していましたが、もっと聴力が失われるシーンを重く描いてほしかったと感じました。これじゃ、単に禁酒できない上にドラッグ漬けになっただけの男のような気もする。頭の中で想像していた音というエピソードも良かっただけに残念でした。あ、それと、いつの間にか酔っぱらってるジャックというのも不自然でした。

 なにはともあれ、シャロウを聴くだけでも価値のある映画だと思います。

kossy
2020年4月19日

76年版すね✨ホントこのシリーズ観たことなくて今tubeで観てますが、ガガも良いけどバーブラも当時としてはええなあ☺️BD出ているんですね。ゴールデングローブも取ってるから当たり前か💦
封開けてやって下さい!おいちゃんw

巫女雷男
kossyさんのコメント
2019年1月7日

ららさんへ
『ボヘミアン・ラプソディ』を引き合いに出してしまい、
失敗したと思いました!(笑)
本当ならもっと過去の音楽映画を引っ張り出したかったのですが、
ついつい最近の映画の方がわかりやすかったため参照させていただきました。

音楽映画における突拍子もない場面はかなりあるはずなので、
今後も気をつけたいと思います。
ちなみに俺もギター弾きなので、
即興というものは慣れているつもりです♪

kossy
kossyさんのコメント
2019年1月7日

元無音声8mmマニアさんへ
貴重なご意見ありがとうございます!
聴力が失われる恐怖、
ミュージシャンにとっては命にもかかわることです。
単純に酒やドラッグにおぼれていく様子を描いた作品は多いのですが、
終盤で単なるアル中、ヤク中に落ちていく、
その原因が聴力にあったことをもっと訴えてほしかったという希望でこの記事を書きました。
年取ると、みな高音域が聞こえなくなるものですが、
自分も大音量をなるべく避けるように心がけています!

kossy
ららさんのコメント
2019年1月5日

>「Doing All Right」にいきなりハモるブライアンとロジャーだったり、練習してないのにできるわけないやろ!と感じるシーンが必ずあるものなのです。このレディー・ガガ版でも、酔っぱらったジャックがアリーの口ずさんだ曲を次の日のコンサートでいきなり編曲し、完成された曲としてアリーとデュエットするという凄技がありました。

向き不向きはありますが、ある程度なれていれば、普通にできますよ。
別にミュージシャンじゃなくて、趣味程度の人でも。
私は小学生の頃から即興してました。

らら
元無音声8mmマニアさんのコメント
2018年12月25日

>>もっと聴力が失われるシーンを重く描いてほしかったと感じました。

この部分、誤解している人が多い(健聴者)と思いコメントさせて頂きました。
健聴の人はみな加齢とともに高周波音から聴力損失が進んでいくのが一般的だと言われている様です。(昔のストマイの薬物や他の疾患、そして遺伝による先天性難聴は別として。)
これは老眼と一緒です。でも、鼓膜に入った振動の情報は脳でスクリーニングされて聴覚情報を処理しているようです
従って、これまでの音楽にて対する聴覚情報は失われる事は無く感性としては脳に残るでしょう。
劇中で補聴器をしろ!と言うシーンがありますが、そもそも現代の補聴器は音を自然でフラットに音量を増幅できるような機器は今だに難しいと言われます(デジタル補聴器と技術は進んだが)。これは老眼鏡で常に装用できないのと同じです。
超高音質と言うとヘッドホンになりますけど。これも長時間大音量で聞き続けると聴神経へストレスを掛けることになり騒音性難聴になる可能性はあります。
ただ、老眼も聴力低下も一度進むと二度と戻らないのも同じ事で。
かくいう私も徐々に聴力が低下していった中途失聴者ですけど。

元無音声8mmマニア