「丁寧に作られた傑作」アリー スター誕生 Yuriさんの映画レビュー(感想・評価)
丁寧に作られた傑作
今作は昔からある映画の四度目のリメイクで、ストーリー自体の新しさは全く無い。ララランドや雨に唄えばなど、似たような作品を上げればきりがない。
しかし、今までつくられたどの類似映画より丁寧に、そして情熱を持って作られた映画だ。
セリフの一行一行に命がこもっているし、一人だって足を引っ張る役者がいない。全員が素晴らしい演技を最初から最後まで続け、それを非常に凝ったアングルから取っている。
光の使い方やフレームが美しく、本当にブラッドリー本人が監督したのか何度も確かめたほど。主演しながらこんな映画撮れるなんて、化物か。
ストーリーの展開はしっかりしていてテンポも程よく、合間にはいくつもウィットに富んだジョークや、ほっこりするやり取りが挟まれていて、飽きることがなかった。
その上、なんと言ってもレディー・ガガの圧倒的演技と歌唱力。それだけでなくほぼ全曲オリジナルの曲を使うという大盤振る舞い。どれも印象に残る曲で、しかも伴奏のバンドの質がありえんほど高い。歌と演奏のクオリティが、音楽映画としての説得力を最大限高めてくれている。その上、ガガ自身主人公と似たような苦悩を過去持っていたことも相まって、まるで、「いたかもしれないレディー・ガガ」を見ているような錯覚に陥る。
これより説得力のあるスター誕生は少なくともあと50年作ることができないだろう。
ーー少しネタバレーー
映画好きなら絶対に見たほうがいい傑作映画なのだが、ハッピーな展開一辺倒の映画ではない。レディー・ガガがスターになってやったー!という映画ではなく、それを取り巻く人間関係をじっくり描いた濃厚な映画だ。
ベタでベタベタな展開を期待してはいけない。それを期待していくと、がっかりするかもしれない。ブラッドリーとガガの歌が聴きたいだけの人は、ミュージカル映画ほど歌だらけではないので(それでもたっぷり尺はとるが)、そこも注意。
まとめ
気になっている映画好きは必見の傑作。気軽にちょっと映画を見たいだけの人にはちょっと重いかもしれない。