劇場公開日 2018年4月14日

心と体とのレビュー・感想・評価

全74件中、1~20件目を表示

4.0かつてない不思議で神聖な余韻をもたらしてくれるラブストーリー

2018年4月26日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

笑える

悲しい

幸せ

ハンガリーから届いた本作は、心と心とが静かに繋がり合っていく、そんな不可思議だが美しい瞬間に満ちたラブストーリーだ。20年ほど前、『私の20世紀』というモノクロ映画で高評価を獲得した監督が放つ久方ぶりの新作。奇しくも『レディ・プレイヤー1』や『ジュマンジ』では登場人物がゲームやバーチャルリアリティ内で異なる姿へと変身を遂げるが、本作における「夢」の中で見ず知らずの男女が何故か鹿になって出会うという設定も、これらと少し似ているのかもしれない。そこではあらゆる外見やハンディキャップを超えて、彼らは心と心を寄せ合い、自ずと惹かれあっていく。一方で男女が働く生肉処理工場は、命のやりとり、食の現実、そして魂そのものにも目を向けているかのようで、綺麗事だけではない崇高な視座や余韻をもたらしてくれる。おかしくて、可愛らしくて、しかし時々、厳粛な気持ちにも包まれ・・・こんな映画、他では滅多に出会えない。

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牛津厚信

4.5メタファーの難しさ

2025年8月12日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

2018年ハンガリーの作品
非常にメタファーで解釈が難しい作品
物語は屠殺場の財務責任者のエンドレと、出産休暇の代替としてやってきたマリアの物語となっている。
屠殺の瞬間は映像にないが、その直後の映像は見る人に大きな影響を与えるのは間違いない。
そしてそれらのことがあって我々は肉を食べることができる。
牛という生き物が肉というモノに変えられる瞬間があの場所
エンドレは面接に着た若者に「憐れみを感じないならば、この仕事は不向きだ」というが、確かに正気を保っているのは難しい気がする。
この場所をモチーフにしたのは、これが人間社会の仕組みで、最も酷な場所であって、心を閉ざさなければならないことで、加えてその延長線上にいる人間は少なからずその影響を受け続け、心や体が壊れてしまうという暗示なのかもしれない。
左腕が不自由なエンドレ
心が不自由なマリア
マリアは人との身体的接触を極端に避け、感情表現も非常に抑制している。
彼女は自閉スペクトラム症に近く、感覚過敏や社会的コミュニケーションの困難さがある。
彼女が手を握られることに強い拒否反応を示す場面などは、まさに接触恐怖症的だろう。
「鑑定士と顔のない依頼人」の主人公と同じだ。
二人は同じ夢を見ていた。
シカ
シカはおそらく自由の象徴
心や体の不自由さから自由への憧れをシカに例えたのだろうか?
社会構造が身体的自由を奪い、また心の自由を奪っている。
物語はその不自由さをAIとブレインマシンインターフェイスに置き換えた「攻殻機動隊」のようには持っていかず、お互いの欠点を認め合える世界に方向を向けた。
さて、
エンドレは老人であり妻とも別れ性的にもステージから降りた人物だ。
彼は娘がお金の都合を依頼してもOKせず、孤独な日々を過ごしている。
それはマリアも同じだが、何故この二人が主人公なのだろう?
何故親子ほど離れた年齢の二人だったのだろう?
エンドレは元妻か元カノかを呼んでSexし、やるだけやって「帰れ」という。
そこには満たされない気持ちと、マリアへの未練がある。
それ故に、「友達でいよう」と言ったにも拘らず電話を掛けてきた。
手首を切り血が溢れ出していたマリア
携帯電話に着信したのは間違いなくエンドレだとわかった。
絶望からの光
接触恐怖症を何としても克服したい彼女は、積極的に取り組んだ。
ただ、時間が必要で、ずっとモヤモヤしていたエンドレには少し長すぎたのだろう。
結ばれた二人はもうシカの夢を見なくなった。
不自由を克服した二人には、シカはもう必要なくなったのだろう。
この作品は、
人間社会のしている事実を背景に、命をモノにしてしまう構造と、それを知らない無数の人々は、動物たちの無言の声によって心も体も壊れていくのではないかと警鐘を鳴らしている。
そしてその壊れた体と心は、許し合い認め合う人間性によって補うことができると言っているのかもしれない。
エンドレが老人だったのは、老人にも未来はあると言いたかったのだろう。
最後の歌は、失恋を謳っているが、それは戦争によって引き裂かれたことを告げていた。
戦争も人間社会も否応なしだ。
このどうしようもない世界の中で、最後に通用するのが「許し合い認め合う人間性」なのだろう。
今回は完全に妄想的解釈だった。

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R41

3.5雰囲気が独特

2025年6月11日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

この映画の持つ雰囲気が独特で、食肉工場の肉や血まみれのシーンではグロいのに、それに対して風景や鹿の静寂さや控えめな音楽で、時間が止まっている様な錯覚を味わった。毎晩夢の中で鹿になった二人が出会えるというなんともロマンチックな話しであったが、二人が結ばれて現実になるともう夢が見れなくなっていたという夢の儚さが見事に描かれていた。片腕の老いぼれた男が若くて美しい女性に「死ぬほど愛している」と言った時、その勇気にドキッとさせられた。

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ゆうき

3.5寝ましょう

2024年11月18日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

夢で遭遇していた現実の他人。ものすごくそそられる設定に感じたが…。
もっと夢での2頭の様子が有っても良かったな、という印象。
全体的に、いろんな意味で綺麗な作品。
そして、凄く静かな作品。
ともすれば、怖さを引き出すくらいに綺麗な静かさ。
異質なキャラ設定がズルい感じにもみえるが、イイ味になってる。

悪くない、コレといったパンチ力は無いが、沁み入る雰囲気が有る。

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奇妙鳥

3.5マーリアとエンドレ二人とも生きづらそう

2024年5月19日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD
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Giovanni

4.5ものすごく好きなのに、伝わりきらない

2024年3月7日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

心と体は人間が「生きる」ということの両輪だ。「心と体と」で出逢うマリカとエンドレは、その片側に複雑さを抱えているのが興味深い。

エンドレの場合はわかりやすい。登場人物たちからの言及もあるし、少し観ていれば「左腕が動かないんだな」とすぐにわかる。
また、年齢を重ねたことで自分の魅力についても自信がなく、人生の実りの時期を迎えて「愛は自分のもとを過ぎ去った」と感じているであろうことも想像に難くない。

一方のマリカは内面に複雑さを抱えているので、最初は彼女の事がよくわからない。単に几帳面なのか、思いやりに欠けるのか、人付き合いが苦手なのか、判然としないのだ。
徐々にマリカという人物を理解していくのは、エンドレも観客である私たちも一緒である。

そんな「普通」と一線を画した二人が親密になるきっかけが「同じ夢を見ている」という事実だ。
しかも、互いが雌雄の鹿として互いの夢に登場するという不思議さ。
簡単に言うと、「夢で逢っている」状態だ。
こんな状況で運命を感じないわけがない。

エンドレは夢の中での逢瀬をきっかけにマリカに恋愛感情を抱いているのがすぐにわかる。
で、マリカも同様にエンドレに夢中になっていくのだが、それが全然エンドレに伝わっていないのだ。もどかしすぎる!

レゴの人形でのリハーサルや、雑貨店での化粧水のやり取りなど、細やかで繊細なディテールがシンプルなストーリーと美しい映像にマッチしていて、全く観ていて飽きない。

精神的にはお互いを求めて止まない状況なのに、夢の中では野生の鹿としていつも行動を共にしているのに、精神が肉体を媒介にした目覚めの瞬間から二人はすれ違い続けてしまう。
肉体があることで、愛しあうという純粋な行為に社会性やコンプレックス等の不純物が混ざり、愛を伝える困難さが浮き彫りになる仕組みがとても面白い。

ピュアで王道のラブストーリーを堪能しつつも、いかに私たちの社会が「普通」を前提に成り立っているか痛感させられる。
体が「普通」で、心が「普通」な人間たちだけで構成されているかのようなシステムからはみ出した二人を、応援したくなる良質な恋愛映画だ。

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つとみ

3.5鹿のシーンがとびっきり

2023年4月3日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

食肉加工場のシーンと、お風呂でのあのシーン
同じように血が流れるわけだけど、そこまでの距離感というのかな。
後者の「身の毛もよだつ」感覚はちょっとトラウマ級だった。

全体を通してみれば美しいラブストーリー。
でも肉体的な欲求っていうのは付いてくるわけで。
心だけでも存在できないし、体だけでも存在できない。

夢でみた鹿は、きっと客観視した自らの”体”なのだと思う。
なんかうまいこと表現できないけど、きっとそうだ。

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mar

4.0相当独特なラブストーリー

2023年3月30日
Androidアプリから投稿
鑑賞方法:VOD

ハンガリー映画の鑑賞は本作が初めてだと思う。相当独特ではあるが、やはりヨーロッパ感が非常に良かった。
本作は「血」が生々しく描かれているため直視できないシーンが多々あったが、色彩溢れる映像の美しさとヨーロッパ特有の淡々感、そして何気にユーモアも盛り込まれていたのが、この映画が評価された所以だろう。
特に印象的だったのは、マーリア単独シーンはすべてがピュアに映る。本人や風景や部屋のインテリアを含めて、透明度が半端ない。
また、隣接部屋から撮るカメラワークも映像美をより一層盛り立てていたと思う。
ストーリー的にはおじさん向けかなと感じつつも、やはりおじさんとしては高評価せざるを得ない作品でしょ。

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いけい

4.5美しい肢体のアレクサンドラボルベーイ

2023年3月1日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

アレクサンドラボルベーイ扮する鑑定士マーリアがゲーザモルチャーニ扮するエンドレの勤める食肉処理場にやって来たが堅物でなじめなかった。たまたま精神分析医のカウンセリングでふたりはまさに同じ夢を見ていた事が分かった。

とても静かな雰囲気で展開されたが、時々ショッキングな場面が流れる中、美しい肢体のアレクサンドラボルベーイに魅了されたね。如何にコミュニケーションが苦手とはいえこんなブロンド美人と全く同じ夢を見てるなんて心が通じて刺激的で喜ばしい限りだね。まさに男の夢と言えるだろうよ。

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重

3.5夢の中、駆け巡る

2022年11月14日
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23

4.0意外にも本筋はラブコメ

2022年8月12日
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鑑賞方法:VOD
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wutang

2.5フレンチ・アート・コメディ

2022年2月15日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

オススメされたので見てみました。
ジョーカーのような、精神のズレとかを 笑いの間にするわけではなく
完全に、編集がオフビート的なコメディの要素がありますが
役者さんの表情が、真顔過ぎて笑えはしませんでした。

ジョーカーの場合は笑ってしまうと精神の病に対する共犯関係が生まれる
緊張感があったが
これは、そういう緊張感はなく
割と装置的に障害や環境を演出していて露悪的だと感じた。

ただ、すごく古典に忠実な編集法で
特に冒頭は、1シーン1シーン考えられて作られていて
観ていてワクワクさせられた。
丁寧なことは素晴らしい。 あとは動物がかわいそうだった。

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Nov

4.0テンションひっくいなー

2022年2月13日
iPhoneアプリから投稿

静寂に包まれた本作
とにかく主人公たちのテンションが低くて、ずーっと何にも起きないし、プロットが弱いというか、いやそれもまた魅力なんだが

正直テーマがひっちゃかめっちゃかで、人見知りいじめ問題なのか、田舎工場ホラーなのか、ハンデ抱える者同士の支え合いなのか、歳の差ロマンスなのか、途中に映画史でもこれほど中途半端なサスペンスあるかあ?ってほどの展開もあるし
あと食肉のために命を殺めることへもっと踏み込むかと思いきやそんなに触れないし笑

まあそれもまた魅力なんだが

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アリンコ

4.0同じ夢

2022年2月3日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

幸せ

女性がキレイで美しくてファンタジーなのかと思いましたが……違いましたね
二人の寡黙さがよかったです
言葉よりお互いの事を思いやれるから
……あなたは美しい……雄鹿が優しくて(あなたが好きです)と言っている様に思えた 彼女は彼女なりに一生懸命アピールしてたし考えてた

同じ夢をみることはあるのだろうか
不思議な気もしますがそこもおもしろいと思った
彼女は彼と共通するところは同じ夢だから
雄鹿の優しさを彼に投影していた(わからないけど)
包み込む父親みたいな彼が彼女にとっては心地よさもあり話す歩調が合っていた(何となく)
鹿の夢を見なくなったのは二人が心と体がひとつになったから(年が離れていても思い合える人がいる)
彼女の微笑む顔が明るい

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しろくろぱんだ

4.0すごくきれいな映画

2022年1月21日
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冒頭の鹿のシーンがキレイだなぁと思ってたら、
それが夢につながるなんて。ストーリー展開もキレイ。
その鹿のしぐさの愛くるしさや、動きのキレイさ。
この映像を見てから脚本作ったのかと思うほど。

色使いと距離感(カメラアングル)がとても上手い。
コミュニケーションが苦手で人付き合いができない彼女と、
人付き合いが面倒でコミュニケーションを放棄した彼。
寡黙な二人なので、心の変化を色合いや小物、距離感やアングルで表現。
映画は映像で語ってこそ映画。

初めて彼の家に行くシーン。
「眠れない」は、
彼の方は興奮して眠れないで間違いない。
彼女の方は?雑音がうるさいから?

他人への対応や、エアーベッドへの切れ方、
嘘の付き方、元家族への接し方など
彼の人間性が垣間見える。
せっかく心と体が結び合ったんだから、
どうか汚さないでおくれ。
彼女の。
心と体と。

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にゃろめ

3.5十七文目

2022年1月15日
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Ironout22

4.0良い映画

2021年8月1日
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映画史上もっとも静かなハッピーエンドじゃないでしょうか。彼女の表情がだんだん緩んで人間らしくなるのがいいですね。途中、記憶力が驚異的なのは超人的すぎるからもうちょっとただのコミュニケーション下手に描けばいいのにとも思ったけど、あとから考えるとそんなに違和感もないかも。

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三毛猫泣太郎

3.5神秘的と言っていいのか迷う

2020年7月26日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:DVD/BD

鹿の夢のシーンがとても美しい、ネットのアバターや3Dキャラだとまだここまでにはいかないような。

カテゴライズしてしまうとその神秘性が奪われてしまうので、いいのか悪いのか。現代のこの舞台設定で、そういう風に思わせることがすごいのかもしれないが。

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なお

4.0タイミング

2020年5月10日
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くり

5.0この映画、新しいジャンルの幕開け。

2019年12月9日
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鑑賞方法:DVD/BD

ちょっと重苦しいんだけど、
時々笑いが抑えきれなくなるの w
これって監督の映画作りの「観る者たちへの配慮や優しさ」ですね。

暗い画面と、ひそひそ話の舞台設定で、あー、このままじゃ最後まで観るの辛いなーと、その思いがピークになる毎に「笑い」を配置してくれて、一気にこちらは二人の応援モードに引き込まれるのです。
これは「シンプル・シモン」でも感じたことでした。「笑い」は心の緊張を緩めてくれます。緊張が緩むと人を助ける行為が少したやすくなります。

マーリアは今までセラピストとしか会話をしたことのない娘。だから職場の上司に自然に惹かれたわけでもなく好きになったわけでもない。
同じ夢を見た、それだけが彼女の心に何かを起こしたわけで。

上司のエンドレを頑なにシャットアウトしつつも内なる衝動を診察室やアパートの布団の中で自己分析し、初めての対人関係に向けての助走を試みて孤軍奮闘するマリアが見ものです。

そこに登場するCD屋のお姉さんや職場のお掃除のおばちゃんのマリアの“病状”への察し方。マリアに無理なく接するセンス。とても良いんだなぁ!

難しい付き合いになるだろうことは想像も出来るが、今は二人の笑顔をこちらも幸せな気分で見守る、それで良いし、それが良いのだと思う。何か再び事件が起こったときには我々がCD屋のお姉さんや掃除のおばちゃんになればいいんだから。

それにしても、
僕らの社会にはいろんな人がいるのだと教えてくれる映画が数多く作られる時代になりましたね。
そしてこんなにアーティスティックに、そしてスタイリッシュに対人関係障害やサヴァン症の人間を「社会人」として登場させることも出来る、そんな映画人が出てきたことは、新しい時代の幕開けという気がします。

【好きなシーン】
・ブラウスが淡い暖色になりボタンがピンクになるところ。
・リスカの彼女がエンドレの麻痺した片腕を持ち上げるところ。
・陽光を求めて人々が空を仰ぐ冒頭シーンと日陰に後ずさりしていたマーリアもエンディングでは日光を浴びる。
・テーマソング、ローラ・マーリングの「What He Wrote」。韻がとてもきれい。

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きりん
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