ダリダ あまい囁きのレビュー・感想・評価
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ダリダの楽曲に依存した、ダイジェストのような作品
ダリダの人生は、悲劇に塗れた壮絶なもの。恋多き女で、才能あふれるシンガーで、人生がそのままドラマである。これは確かに映画にしたくなる人生だし、映画化した人の気持ちも分からなくもない。ただ誤算があるとすれば、あまりにも壮絶すぎて、2時間の映画にするとただのダイジェストにしかならないということだろう。
ダリダの歌声は素晴らしく、音楽が流れるたびに思わず心震えるほどなのだが、如何せん、物語と演出と芝居がそれについていかない。同系列作品の「永遠のマリア・カラス」や「エディット・ピアフ 愛の賛歌」などと比べてもだいぶ見劣りがする。
とにかくストーリーがきちんと描けていないため、登場人物全員がとにかく極端な行動をとるだけの人たちにしか見えなくなってくる。次の展開へとつながらないぶつ切れのようなシーンだけでは、登場人物たちの思考や沸き起こる感情が描き切れておらず、すべてが唐突に思えてしまい、そういった言い足りなさを補うために垂れ流されるダリダの名曲たちの使い捨て感も実に無粋なやり方で、歌を一曲流せばそのシーンが成立するとでも思って手を抜いたかのようだ。ダリダの隣で次々に命を絶って行った男たちの存在も、ダイジェストの一部でしかなくなってしまった。
唯一この映画を見て収穫があるとすれば、是非ともダリダのアルバムを聴きたいと思わせてくれたことだ。聞き覚えのある楽曲も多数ありつつ、初めて聞く曲もいずれも素晴らしい楽曲ばかりだった。なんなら、ダリダがリリースしたアルバムや楽曲にこそ、この映画が描き切れなかったドラマが吹きこまれていそうな気がしたほどだ。この映画自体にはさほど感心しなかったが、ダリダのアルバムは必ず聴こうと、そう思いながら映画館を後にした。
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