天才作家の妻 40年目の真実のレビュー・感想・評価
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妻の思いが爆発する時
これはすごく面白い映画だった!
作家・ジョー(ジョナサン・プライス)はノーベル文学賞を受賞
授賞式に出席するため、妻のジョーン(グレン・クローズ)と息子を連れてスウェーデンのストックホルムへ向かう
現地でジョーンはノーベル賞作家の妻として歓迎されるが、彼女には誰にも明かしたことのない秘密があり…
私は結婚していないので、推測になってしまうけれど
おそらく、どんな夫婦にも、40年も一緒に暮らしていれば、積もり積もった思いというのがあるはずだ
なにも積もらせることなく、定期的に吐き出してスッキリさせておけば問題はないのだろうけど
吐き出さずに溜め込んでいると、ある日突然、それまでの思いが爆発してしまう
この映画の主人公である作家の妻もそうだった
彼らは1950年代に結婚した夫婦である
その頃はアメリカでも女性たちの社会進出が難しく、内助の功が美徳だった時代だ
どんなに妻が夫のために尽くし、キャリアアップに貢献しても、評価されるのは夫の方
妻はそのことを「二人でがんばって築き上げたキャリアだから、それでいい」と思い、そんな夫の姿が誇らしかった時期もあったはずだ
しかしある時、妻は「私のこれまでの人生はなんだったんだろう。このままでいいんだろうか…」と考えてしまう
そこまでの話を読んで
もしかしたら「あ、それは私のことだ」と思う人もいるかもしれない
というのも、私は、そんな二人を自分の両親と重ね合わせて観ていたからだ
妻が夫にぶちまける文句は、私がいつも聞いている母の愚痴そのものだったし、母の言うことを全く理解できず、見当違いなことを言う夫の姿は父そのものだった
その呆れてしまう感性の違いは、万国共通なんだなと思った
そんな私の話にピンと来た人は、ぜひ、この映画を観て欲しい
きっと妻の姿に共感できるはずだ
この映画を観て、これまで溜めてきたものを全部吐き出して欲しい
先日のゴールデン・グローブ賞では、この映画で妻を演じたグレン・クローズと「アリー」のレディ・ガガが主演女優賞を受賞した
恐らく、アカデミー賞では、その二人の一騎打ちになると見られている
私は、その二人が演じた役には共通点があると思った
この映画の妻も、アリーも、才能ある女性たちであり
彼女たちは夫からの嫉妬に苦しめられ、足を引っ張られた女性たちなのだ
そんな二人を演じた彼女たちが主演女優賞を争うのは、決して偶然ではない
男性たちが才能ある女性に向かって「家庭に入って俺のことを支えて欲しい」なんて言う時代は終わり
今、女性たちが自分の才能だけで生きていける時代がやって来たのだ
世の殿方たちは、いつまでも、誰かが世話してくれると思ったら、大間違いなのだ
良い時代がやってきたと思う
団塊の更に上の世代の夫婦関係
1992年にノーベル賞受賞、1958年に教師と生徒の関係だったという設定なので、2019年時点で存命だとしたら90代と80代くらいの夫婦の話。
そう思って鑑賞しないと「よくある熟年離婚の危機」、さらには「そもそも私はこんな我慢はしない」で終わってしまう。
強固な意志と運が無ければ女性が表舞台で正当な評価を勝ち得ることが困難だった時代、主人公ジョーンは夫のジョセフの立場を利用して間接的にでも自分が認められることを望んだのであり、一方的に彼の「奴隷」になったのではない。
実際、「私なら書き直せる」とジョーン自らゴーストライトを提案したことが、すべての始まりなのだ。
夫の社会的成功が妻の手柄であり「内助の功」が讃えられる時代、これはこれで幸せと言える共犯関係だったと思う。
(話はそれるが、今どきのイクメンでも「お手伝い」感覚の人が多い中、ジョゼフ世代の男性が家事や育児を担うって半端な覚悟では無理だし、彼だって頑張ったのだ)
しかし1990年ともなれば日本ですら雇用機会均等法が成立し、女性の立場がどんどん変わっていく。
ジョーンとジョセフの役割(どちらが作品を書くか)は昔のままなのに、世の中が変化していく。
そしてノーベル賞の受賞が引き金になって、ついにジョーンは我慢がきかなくなってしまう。
こんな華々しい栄誉をジョセフが受けることが無ければ、彼女は不満を持ちつつも自己を抑え、離婚を切り出すことはなかったのではないか。
良妻賢母とか夫唱婦随とか、世間から叩き込まれ、従って生きてきた価値観は簡単には捨てられないものだから。
そんな中ジョセフが急死し、どうなるのかと見守ればジョーンは記者ナサエルに「夫の名誉を傷つけたら訴える」とラストで釘を刺す。
評価の別れるシーンだと思うが、自分の祖母を思い浮かべながら私は妥当と感じた。
娘と息子には本当のことを話して溜飲を下げても、対外的には夫を貶めない。
ジョセフが作家として成功した後も「影」でいることを選び続けたジョーンなのだし、騒動を起こさなくても「賢夫人」の立場で第2の人生を謳歌すればいいのだから。
熟年夫婦の葛藤
試写会にて鑑賞。
原題は「The Wife」なのに邦題なんでこんなに長くしちゃったの?そのままでも良かったのに。
ダメな旦那だけど、離れられない。端から見たらノーベル賞受賞して孫も産まれて幸せの絶頂のはずなのに満たされない。。。その心がくるくると変わる表情で表されていて絶妙でした。
そういえばグレンクローズがグラミー賞取ったそうですがこのままアカデミー賞も取って欲しいですね!
個人的には"I'm a king-maker."の台詞とその時の表情がすごくグッときました!!
あと、あのイケメン記者誰だっけ?とずっと気になってましたが、クリスチャンスレーターだった!あのグイグイ距離を縮める感じ、結構好きかも。
夫婦で鑑賞するには相当な覚悟が必要
1992年のある朝、老作家ジョゼフ・キャッスルマンの寝室の電話が鳴る。それはノーベル文学賞受賞の知らせだった。狂喜するジョゼフとその妻ジョーン。夫妻は息子マイケルも伴って授賞式が行われるストックホルムへ旅立つが、機中でナサニエルと名乗る記者に声をかけられる。何かを知っている様子のナサニエルはストックホルムで再びジョーンに話しかける。しばしの談笑の後ナサニエルは彼が調査の末に辿り着いたある推論について語り始めるが・・・。
ストックホルムで授賞式を待つ数日間とジョゼフとジョーンが出会った1958年からの10年間が交錯する物語。晴れの舞台というのに散髪もしないジョゼフ、彼の健康を気遣いそっと寄り添うジョーン。ナサニエルが投げかけた言葉に呼応するようにホテルの床を転がる胡桃、スイートルームに並べられたジョセフの著作、ジョーンがふと見つめる腕時計に刻まれた刻印が二人の本当の姿を過去から引きずり出す一部始終がとにかく圧巻。思わずティム・バートンの『ビッグ・アイズ』を連想してしまいますが、それと歴然とした差をつけるのがグレン・クローズの存在感。クライマックスで見せる胸の内をかき乱す複雑な想いを言葉ではなく表情で語る熱演に身震いしました。
若き日のジョーンを演じているのはグレン・クローズの娘アニー・スターク。女性蔑視があからさまな時代に翻弄される女性像を見事に体現しています。もちろんジョセフを演じるジョナサン・プライスも見事で、子供のような無邪気さの向こうに見え隠れする驕りや弱さを少しずつ露呈していく演技にイライラさせられますが、その苛立ちは映画を観終わると自分に襲いかかってきます。
今の時代においても普遍的な何かを深く考えさせられるずっしり重い作品、夫婦揃ってのご鑑賞には相当な覚悟が必要です。
種明かし映画とみるか、描写映画とみるか
機内にて。ワンアイデアで100分を走りきる構成は好き嫌いが分かれそう。予告編でなんとなく予想できる範囲を超えない点は少しマイナスか。
逆に言うと、種明かしには焦点を置かず、主演Glenn Closeの胆力とノーベル賞の舞台裏という非日常の設定を楽しめたら良い評価になりえる。
夫の、ノーベル文学賞を喜ぶ作家、という人物像に最初大きな違和感を覚えつつ、徐々に明かされる「真実」によって納得させられる。
内容自体は近年のアカデミー賞で流行りの、「マイノリティー・抑圧されてきた者たちへの着目」という物語のひとつのように感じた。
個人的にはラストに不満が残る。観客に明かされ、妻が正面から向き合うことを決めた「真実」に、夫がどのような向き合い方をするのかを、この作品はほぼ描かない。
辛抱強いと思われたくない
機中鑑賞。グレンクローズの存在感が際立つ。夫婦や男女の格差を扱っているようであるが、縁の下にいる側と名誉を受ける側との葛藤が主題のよう。男女の要素を取り除くために、この話を男女逆、もしくは共に男で話を組み立て直して仮定してみると、これは醜い話になってしまう。更に、終盤は積み上げた話を壊しかねない展開。
それぞれのキャラクター、それぞれ想いが書き込み不足に感じた。そんな台詞に劇中にでくわす。自己批判か?
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