「葛藤に、涙する。」人魚の眠る家 にんさんの映画レビュー(感想・評価)
葛藤に、涙する。
何の知識もなく見た。篠原涼子主演の話題作だ〜。くらいで見た。
こんな内容だと思わなかった。驚きと、衝撃と、怖さ、切なさ、全てにおいて涙が、とまらなかった。なんだこの映画は。
篠原涼子の演技が凄い。本当に目の動きひとつ、引き込まれる。そこにいるのは篠原涼子という事を忘れる程、話にのめりこんでしまう。
全体的に何とも言えない不穏な空気が漂うようにしている。ライトは青を多く使い、「人魚の家」を連想させる。ラストの構図も家をみせることで題名との違和感もない。すべてがしっくり来る。凄く考えられた作品だ。
生きていると思いたい母親の気持ち、添いながらもだんだん違和感が見え始める父親の気持ち、みんなから奇特な目で見られたくない息子の気持ち、過ちを悔やみきれない祖母の気持ち、明るくふるまう義理姉の気持ち、本当のことを言えなかった姪っ子の気持ち、みんなわかる。みんな間違ってない。だから辛い。
父親の、「俺が、偽りの希望を抱かせてしまった」はすごくささった。父親だって、ただ、娘を、失いたくなかっただけだったのに。
今回は子供だったが、子供だけではない、自分の、大切な人が、こうなったら、と考える。誰にでも起こりうることだと思う。でも。みんな、決して考えない。普段、そんな重くて暗いこと、考えない。この映画をきっかけに、一度、話そうと思った。明日、自分が、自分の大切な人が、起こりうる可能性はゼロではないのだから。
最後の男の子は、これは、苦しい葛藤を乗り越えた視聴者が、少し救われるシーンだと思った。解明されていないが、臓器は、元の持ち主の何らかの意志を引き継いでいると聞いたことがある。娘さんはどこかで生きている。光が射し、希望を持てるラストだったように思う。
個人的には松坂慶子さん、山口紗弥加さんの演技が良かった。すごく自然で、こんな人が本当にいる、と思うのに違和感無かった。篠原涼子より目立つことなく、脇役を最高に固めてくれているのもさすがだ。
川栄さんは先日、元婚約者に向けた?ツイートがヤフーニュースになったところだったので、ちょっと悪い意味で存在感が際立ってしまった。(^^;)
この映画はお薦めではあるが、人に進んで薦めるようなことはしないでおこうと思う。この題材に、覚悟が出来る人だけ、見たほうがいい。翌朝、辛すぎて泣きすぎて目が腫れてしまった。