「人の技術が許される範囲と許したい気持ち」人魚の眠る家 マツマルさんの映画レビュー(感想・評価)
人の技術が許される範囲と許したい気持ち
以前から気になっていた作品で重い設定に少し気が重くなりながらも観賞しましたw
感想はと言うと、良くまとまってます。
伏線の張り方もまとめ方も上手いので、原作を読んでなくても、映画だけでキチンとまとまっているのが良いです。
ただ泣かせると言うよりも心に迫るキューとなる思いに心が揺さぶられる感じでしょうか。
ただ重いですよねw それでも何処かでラストでは憑き物が落ちた様なスッキリ感がありますが、この辺りは好みの分かれる所かと。
我が子を脳死と判定されながらも心臓は動いていると言う事実に最先端技術で生かす(動かす)事で生きていると思いたい気持ち。親でなくても物凄く分かります。
脳死を受け入れると娘の心臓も止めてしまい、死が完全な形になってしまう。
実の親なら受け入れられないでしょう。
周りの人達との思いに差異はあるのは当たり前ですが、途中から最新技術機で動かされている娘に満足な母親とそれを奇異に見ている人達。
死んだ娘の可愛がってた人形を自分の娘と思い込んでる母親みたいな狂気と言うんでしょうか。
篠原涼子さん演じる薫子の演技もだんだん狂気染みた感じになってきますが、ラストでそれだけでない伏線にまとめ方に唸らされます。
テーマがテーマなだけに面白いと言うよりもこのテーマをどう捉えるかで感想も変わると思いますが、周りの人達の思いや判断はどれも間違っていないだけにやっぱり難しいテーマだなぁと思います。
圧巻は篠原涼子さんの母親としての狂気に近い思いがヒューマンミステリーとして成り立ってますが、まさしく鬼気迫る演技です。
瑞穂役の稲垣来泉ちゃんは動かない(動けない)中にもかなり難しい役を静かに熱演してます。
稲垣来泉ちゃんの演技や作品のテーマから、なんとなくは40年前の怪作「震える舌」を思い出しましたw
多分、この映画を観た後でも自分の周りに同じ事が起こっても、どの判断が正しいのかの答えは出ないと思いますが、自分の中で1つの答えとしてハッとしたのは、田中泯さん演じる播磨多津朗の“人間の技術が許される範囲”と言うセリフでそれは確実にあると言う事です。
それでも人の思いは理由や理屈ではないからこそ、この映画は面白かったと言うよりも、いろんな意味で考えさせられる骨太な作品ではないかなと思います。
ラストもありきたりかも知れませんが変に奇をてらうよりも良いかと思います。変に脱線もしないので割とスッキリまとまっていると思うので結構お薦めです。