劇場公開日 2018年11月16日

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「脳死は生なのか、死なのか」人魚の眠る家 とえさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0脳死は生なのか、死なのか

2018年10月3日
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鑑賞方法:試写会

これは面白かった!

人間の命と魂について、とても考えさせられる話だった

離婚寸前の夫婦、薫子(篠原涼子)と和昌(西島秀俊)には、小学校に入学する前の娘 瑞穂と、その弟 生人がいる

ある時、瑞穂がプールで事故に遭い、意識不明の状態で病院に運ばれ、脳神経外科から「脳死のような状態だ」と診断されてしまう

この映画は、その夫婦が「脳死かも」と診断された娘の瑞穂について、ある決断をくだすところから話が始まる

そこで、考えてしまう
もしも、自分の家族が「脳死かも」と判断されたら、延命措置をするか、それとも、
脳死判定をして、完全に脳死とわかったら、延命措置をせずに、臓器を提供するか

たとえば、これが支持している宗教がある人に起きたことだったら、その判断は牧師さんにゆだねられるかもしれない
けれど、日本には宗教的倫理観が薄いから、このお母さんのような常軌を逸した行動も考えられるし、実際に、こういうことをする人も、近い将来に出てきそう

この映画は、そういうあらゆる可能性を考慮して、観ている人に「あなたなら、どうしますか」と問いかける

その中で、この映画が秀逸だなと思ったのは、この話に原作者の東野圭吾が「人魚の眠る家」と名付けたこと

全て見終わった後に、そのタイトルを思い、「なるぼどね」とうなってしまった

あまり言うと、ネタバレになってしまうので言えないけれど、
鉢植えに、毎日「かわいいね」と言いながら水を与え続けると「美しい花を咲かせる」と言われるように
医学的に「脳死」と判断されたとしても、その眠っている本人に、話しかければ、何か奇跡が起きるんじゃないかと思ってしまうこと

どんなに医学が発達しても、脳死状態の頭の中のことなど、誰も知ることはできない

もし、その世界に興味があったら、この映画を観て欲しい

時おり「これはホラーか?」と思わせるところもありつつ、お母さんの娘を思う気持ちに思わず泣いてしまう場面もある

殺気立った篠原涼子の演技もオススメ

とえ