「予定調和を拒絶した凄惨なバイオレンスと乾いたギャグが印象的、とことんアナーキーなニュージーランド産“ダーティハリーポッター“」ガンズ・アキンボ よねさんの映画レビュー(感想・評価)
予定調和を拒絶した凄惨なバイオレンスと乾いたギャグが印象的、とことんアナーキーなニュージーランド産“ダーティハリーポッター“
本物の殺し合いを生配信する闇サイト“スキズム“が人気を博す街シュラプネル。うだつの上がらないゲームプログラマーのマイルズは会社で上司にイビられるわ彼女にフラレるわの散々な毎日で溜まった鬱憤を“スキズム“のコメント欄に罵詈雑言を書き散らすことで晴らしていたところ、激怒したサイトの運営グループに自宅を特定され襲撃されてしまう。マイルズが目を覚ますと50発ずつ銃弾が込められた拳銃がボルトで両手で固定されていて、“スキズム”最強の殺し屋ニックスとの対決を命じられる。
これはメチャクチャ痛快。『スモーキン・エース 暗殺者がいっぱい』、『ウォンテッド』、『ジョン・ウィック』、『ハードコア』といった作品に滲んでいる突き抜けたバイオレンスと乾いたギャグが綯交ぜとなった感じですが、本作の一番の特徴はアクション映画あるあるを絶妙に裏切る想定外の展開。ありきたりなアクション作品なら最後まで生き残るタイプのキャラクター達があっさり惨殺されていくので、R15+指定も納得の凄惨な描写がよりビビッドに映えます。この辺りは監督・脚本を手がけたジェイソン・レイ・ハウデンの作家性が冴えたのだと思います。ダニエル・ラドクリフは本作でようやく自身にまとわりつくハリー・ポッターのイメージを払った感ありですが、本作の目玉は殺し屋ニックスを演じたサマラ・ウィーヴィング。要所要所でコカインをキメながら高笑いで罵詈雑言を浴びせながら雑魚キャラを殺して殺して殺しまくる合間にチラッとキュートな表情を見せる孤高のキラークイーン、ニックスはマーゴット・ロビーの当たり役ハーレイ・クインを軽々と超えたと思います。
本作はニュージーランド映画。ロケ地もニュージーランドとミュンヘンということで映像に映り込む風景も独特の雰囲気を醸しています。韓国、タイ、インドネシア、ロシアといったバイオレンスアクション先進国がまた一つ増えたという実感で胸がいっぱいですが、ダニエル・ラドクリフのファンと思しき女性客がうんざりした表情で退席していく姿もまた印象的でした。