「アメリカ人にウケそうなネタがてんこ盛り」ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
アメリカ人にウケそうなネタがてんこ盛り
不思議と面白くて、なんでかなと思っていたんだけど、大きい枠組みが20世紀のラブコメのそれで、懐かしい気さえおきるベタさが笑えたのかなと思った。
次に、シャーリーズ・セロンの久々なようなイイ女感が凄くて良かったね。
少女が憧れる才色兼備で可愛さまであり、パワーもフレッド以上。
嫌みなキャラクターになるのかと思えば、アベンジャーズで興奮しゲームオブスローンズで感動する親しみやすさも備わった完璧超人だった。
個人的には環境環境うるさくてちょっとアレだけど、それはまあアレだからね。ハリウッドは基本的に民主党支持のリベラルだから仕方ない。
さて、本作は王道ラブコメと言えるわけだが、もちろんそれだけではない。随所に現代版へのアップグレードがされているのも注目ポイントだ。
まずは男女の立場が逆転しているのが分かりやすい。しかし視点キャラクター(主人公)はあくまでフレッドで、女性が主人公の女映画にさせなかったバランスがニクい。
二人が惹かれ合う理由に納得がいっていないレビューがチラホラあるけど、フレッドが魅力的だからシャーロットが惹かれたのではないことが実は現代的なんだよね。
国務長官として人から好かれ国務長官としてしか見てくれない回りの人たちと違い、フレッドだけは国務長官という肩書きを無視して愛してくれている。
フレッドは常に「昔の君は~」と言う。国務長官の君とは言わない。
それは飾らないありのままの自分でいいという意味で、多忙だし素の自分をさらすことも出来ないシャーロットには、恋愛において選んでもいいと思える相手がフレッドしかいないのだ。
相手が魅力的だから恋に落ちたのは前世紀の話で、21世紀は「ありのままの自分」がトレンド。
とはいえやはり多少の成長は必要だ。
フレッドは自分の考えばかりが優先して、相手を思いやる気持ちに欠けていた。それに気付き自分を消す提案を受け入れる。自分よりもシャーロットが大事なのだと。
シャーロットもまた、政治に飲まれ本当の自分を見失っていたことに気付く。
フレッドが愛してくれる自分は、自分も愛せる自分へ。
そして大統領か愛かの二択を迫られるような展開になる。
前世紀では全てを捨てても愛をとる。愛こそ全てってのが普通だった。もちろん別に悪いことはない。
しかし本作は愛も大統領も両方勝ち取って、一分の隙もなく全方位に勝利したパーフェクトゲーム。
何かを捨てなくても、そのままの自分でも愛は得られると、正に現代的で、それを説得力を持って展開できたことは神業と言っていい。
これがワカンダのパワーなのか?アベンジャーズ恐るべし。
本当ワカンダフォーエバーだよ。