「世界の終わり。いまがそうだ。」アナと世界の終わり xmasrose3105さんの映画レビュー(感想・評価)
世界の終わり。いまがそうだ。
謎のウィルスに罹って、人がゾンビ化していく設定。コロナの前に作られていて、今まさかが起こっているからこそ、符合にちょっとゾッとします。笑って泣いて、エンディングが。最高に、ちょうど良い。
アメリカ映画も、一時期のハリウッドスター満載ド派手な絵空事から、等身大の民を描く作品が、市民権を得るようになってきた気がします。
のっけから「映画みたいなエンディングはないよね」「やっとわかった、いいヤツでもモテないって」「なんで本当のことおしえてくれなかったの」と、ハートを掴まれる歌詞。日本人でも、憧れでなく、共感できる。国は違っても同じ地平線上に生きる人たち、と言う気がします。純粋にミュージカルとして歌も、歌詞も、役者さんもみんなハマっていて、これは映画じゃなく舞台にしても楽しめそうです。
一見、ゾンビ映画なのでB級ホラーみたいですが、人類がコロナに襲われているいま、危機で晒される個人の人間性という意味あるテーマ。権力は助けに来ない。役に立たない。個人の、思い思われる気持ちが、生命線。でも愛情の矢印や質・量は、合致すればもちろんHappyですが、必ずしもそうなるとは限らない。親子、友人、恋愛、先生と生徒、期待のすれ違い。
でも究極の時に、人としての部分、その人の本質が出ますね。大切な人がいる。報われても報われなくても、その人のためを思える人は強い。歌と笑いに包みながら、すごく上手く描いています。校長は威張るわりには人格が...自分しか大切に思えない人だから。ニセの強さ。
本物の強さをひとつでも交わしあえて、心を結べた記憶は、その人を支えてくれる。たとえ永遠でなくても。
もはや粋。メロディに乗ると、より胸に刺さる。何度もうるっときました。
主人公が退屈だと思っていた環境が、いかにありがたいものだったか。無くすまで、人は気付けない。「昨日までは人生は自分が作るもの、どんな自分にもなれると思っていた、けれどそれは間違いだった。」
現実でも今は、一つの「世界の終わり」。
“普通”はある日突然、終わる。未来を描く地図もコンパスも消えた。理想もわからない。命の保証すらない。生き残るのも、運でしかない。でも、たまたまでも、こうして生きている。自分もその一人。いつまでかわからないが、生き残っている限りは生き抜く。どこへ辿り着くかわからなくても。身に沁みるテーマです。