劇場公開日 2018年6月1日

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「『愛はかげろうのように』の引用は凶悪!あと邦題のセンスが素晴らしい!」ビューティフル・デイ よねさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0『愛はかげろうのように』の引用は凶悪!あと邦題のセンスが素晴らしい!

2018年8月21日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

NYの片隅で年老いた母と暮らすジョーは過去のトラウマに苛まれながらも行方不明となった少女を見つけて親の元に帰すことで生計を立てていた。ある日上院議員のヴォットに引き合わされたジョーは行方不明になった娘ニーナを救い出し誘拐した連中を痛めつけて欲しいとの依頼を受ける。ニーナが売春宿にいることをつきとめたジョーはハンマー一つで乱入し難なくニーナを保護するが、ニーナは感情を失っていた。裏寂れたモーテルでヴォットを待つ二人はテレビでヴォットが飛び降り自殺をしたというニュースを見てしまう。

鎮痛剤を手放せないほどに重いジョーの抱えるトラウマはボロ切れのように放り込まれるフラッシュバック映像で暗示されるのみ。物語を導くような台詞もなく、過酷な運命に晒されながらも感情を露わにすることのないジョーとニーナがただただ美しい。全編血塗れで明け透けなバイオレンスがのたうち回っているのに直接的な暴力シーンはほとんどなく、黒ずんだ血の海に沈んだ死体があちらこちらに転がっている様は氷のように冷たい。サントラの使い方が独特で、とりわけシャーリーンの『愛はかげろうのように』の引用は凶悪。ホアキン・フェニックスが醸す哀愁とニーナを演じるエカテリーナ・サムソノフの美しさがとにかく印象的。この映画にこの邦題をつけたセンスとチャレンジには頭が下がります、素晴らしいです。

よね