「「運命のような導き」がもう少し欲しい。」15時17分、パリ行き すっかんさんの映画レビュー(感想・評価)
「運命のような導き」がもう少し欲しい。
○作品全体
自分自身では必要と感じなかった出来事やスキルが、運命のように導かれて発揮される、という部分がこの作品が持つカタルシスであり「見せ場」であることは作品の構成からもよくわかる。
ただ、その描き方に一貫性があるとは正直思えなかった。
例えば冒頭で小学校時代へ回想するシーンではモノローグが挿入される。主観的な物語であればこれで良いのだろうが、モノローグはこの冒頭だけで、そのあとはそれこそ再現ドラマのような客観的なカメラワークが続く。なんというか、チグハグだ。
旅行のシーンは女性との出会いも含め、本当に長尺を使うシーンだったのか首を傾げた。おそらく物語的には遠回りとも言える部分も、スペンサーたちにとっては日常から非日常への変化があったということを伝えたかったのだろうとは思う。ただ旅番組のような登場人物たちの周りをついて回るような構図は、日常というリアルを切り取るにしてはあまりにも嘘くさい。
あとは列車内のシーン。事件が起きたその瞬間の3人の輝きや、今まで経験してきたことを存分に発揮するカタルシスを期待していたのだけど、作品序盤から小出しに列車内のシーンを映しているからそれが半減されてしまった。
15時17分発のパリ行きに乗りこむまでの過程に集中していれば、もっとインパクトのある「運命のような導き」を演出できたのではないか、と思ってしまった。
そういう意味で、もっと自分に与えてくれるものがあったはずだという気がして、物足りなさが残った。
○カメラワークとか
・ヴェネツィアが好きなのでヴェネツィア旅行に多くの時間を割いているのは予想外の嬉しさだったんだけど、ホントに旅番組みたいなカメラ位置でびっくりした。サンマルコ広場でジェラートを頼む3人とか、映画というより土日の昼過ぎに民放でやってる旅番組だ。
○その他
・イーストウッド作品は主人公の英雄然としないラストが好きなんだけど(『アメリカン・スナイパー』とか『グラン・トリノ』とか『ハドソン川の奇跡』とか)、今回はちょっとヒーローすぎて自分好みじゃなかったというのもあって刺さらなかったのかもしれない。