「途中まで俳優かと思ってた」15時17分、パリ行き maruさんの映画レビュー(感想・評価)
途中まで俳優かと思ってた
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映画についていっさいの妥協をしない、映画愛を感じる。妥協しない、というより、尽くせるベストを尽くす、ような姿勢を監督に感じる。
黒澤明監督のような日本映画界に置ける絶対的な『ザ・監督』のような縦社会的な主導権ではなく、まさにアメリカ的なイニシアチブのかざし方で作られた作品。どこか爽やかというかスマートな雰囲気が映像に漂っている。
2人に共通するのは、映画に対する真摯な姿勢。クリント・イーストウッド監督の作品は、どれを観ても紳士的で真摯で、背筋を正される。
死んでいてもおかしくない恐ろしい事件を、体験者に演じさせ映画化するなんて、正気の沙汰じゃない。どうやって説得したのか。若い三人はまだしも、中年夫婦は気が気じゃないはず。いくら助かったとはいえ、恐ろし過ぎるシチュエーションをもう一度再現させるなんて。クリント・イーストウッド監督だからこそ、撮れた作品だと思う。
確かに、後世に残すべき、三人の勇気、乗客の勇気、恐ろしい事件。これらを映画で描く事は大変意義があると感じる。しかし「観られなければ」意味がない。
観客が入らなければ自己満足の映画で終ってしまう。興行的にも考えて“映画”としてもちゃんと(事件自体は最悪でおもしろくも何ともないが“映画”として。不謹慎な言い方かもしれないが)おもしろいように作られていて、本当にそのバランス感覚には脱帽する。
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