「お見事」15時17分、パリ行き U-3153さんの映画レビュー(感想・評価)
お見事
一気に見れた。
なんなんだろう…これを映画と呼んでいいものだろうか?
メインキャストの3人は、ご本人らしい。
役者ではないのだ。
なのに…画面に違和感がない。
どんな魔法を使ったのだろうか?
英語は演技がしやすい言語だとは聞くが、ここまで違和感のないものなのか?
本人達に照れも気負いもない。
カット毎のつながりも悪くない。むしろ同じ動作が出来てたりする。
エンドロールにボイスなんとかってのがコールされてて、アレが何のパーツを担ってたのか知りたくはあるのだが…。
役者じゃない人達に、役者と同等のものを要求し成立させた監督の手腕に驚く。
いや、ホントに。
今、思い出しても犯人に突進していったスペンサーの目は忘れられない。
気負いも恐怖もない。
捨石になる覚悟が常にあるわけもないだろうが、彼は躊躇なくその身体を銃口の前に投げ出した。
彼のその表情をチョイスしたのか、彼がソレをやったのかは分からないが、アレを本編に採用したのは間違いなく監督なわけで、どんな空気を作ればソレが可能なのか。
ホントに驚き、畏怖の念すら抱く。
物語自体も妙な構成で…。
彼等の子供時代から話しは始まる。
普通の少年達だ。
日本と違うのは銃というものに親しみがあり、軍人に対して憧れがあり、戦争という非日常が華やかな舞台でもあるかのような言い草をする点だ。
前出したスペンサーは、フランス大統領を前に、軍人よりも軍人らしく直立してた。
彼は、落ちこぼれで、その半生はオタクと言ってもいいんじゃないかと思う。もっと言うなら痛い部類に入る人間だ。
フランス旅行では、何気ないやり取りが延々と続くき、彼らの現在が紹介される。
品行方正なわけでもない。
かといって素行が悪いわけでもない。
どこにでもいる一般人。
それがスペンサー氏のスペックで日常だ。
彼が飛び出したのは「スペンサー、ゴー」の一言だ。しかも、何故そこなのかっていうくらい遅い。リアリティといえばそうなのだろうが。彼は友人のそのたった一言で、躊躇なく命を投げ出した。
偶然にも銃がジャミングしてて発泡はされず、彼は犯人に体当りをかまし突破口を開いた。
…ホントに社会派な作品だと思う。
この彼の生い立ちや言動を記録し観せる事は、暗にアメリカという国が不可抗力であれ何であれ、軍事活動を推進し、それが幼少期より刷り込まれてるっていう現実だ。
勇気はあったと思う。
ただ、彼のバックボーンからはヒーロー思考も読み取れる作りにもなってるように思う。
そんな事を無用とも思える旅行記を思い出しながら考える。何の為にあのシーンは必要であったのか?
どおして本人でなければならなかったのか。
単なる英雄譚では無い何かを考えずにはおれない作品だった。