「14時05分の回で見ました」15時17分、パリ行き 梨剥く侍さんの映画レビュー(感想・評価)
14時05分の回で見ました
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事件の当事者を本人が演じていると聞いて驚いたが、ラストの表彰式の実写映像に至ったところで合点が行った。同じ顔の面々がそこに居並ぶのを見て、本編からすんなりつながるのだ。
核となる事件そのものは短時間の出来事なので、どう映画にするのかと思っていたら、いきなり小学生の頃のエピソードから始まる。なるほど、テロ事件が起きた時間から逆算して、その場に導かれた3人の運命の転変を俯瞰して見せる構造かと。
彼らが偶然その列車に乗り合わせなかったら大惨事になったかもしれない(事実同年の11月にはパリで同時多発テロが起きて130人が亡くなっている)。落ちこぼれのレッテルを貼られていたような人間も、何かのきっかけで重要な役割を担うこともある。そうした運命の不思議を際立たせるために、それ以外の日常の描写を重ねていく手法は間違ってはいない。
クリント・イーストウッド監督はこのところ、老齢にしてどの映画にも堂々たる演出力を見せている。既に確固たる文体を手にしたと言ってもいいと思う。
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