「劇映画の極北」15時17分、パリ行き Toshiさんの映画レビュー(感想・評価)
劇映画の極北
イーストウッドの映画はここ10年で色々なモノを削ぎ落としてきた。まず音楽が最小限になった。最近では照明を使わないらしい。そして本作ではプロの俳優を最小限にして主人公を本人に演じさせるという。イーストウッドの年齢でこの挑戦は凄いが彼ほどのキャリアがないとこんな企画は通らないのも事実。これをテロをテーマにしたサスペンスと思って観に行くと肩透かしを食らう。昔からイーストウッドの映画は事前のイメージと違うものが多い。観客を煙にまくひと。
本作はほぼ3つのパートに別れている。主人公たちの少年期を描く第1パート、彼らのヨーロッパ旅行を描く第2パート、そしてテロ当日の第3パート。少年期のパートはしっかり演出された劇映画になっているので、ヨーロッパ旅行の件は何だこれは?と思ってしまう。若者たちの旅行をただ延々と撮っていく。何のドラマも事件へ繋がる伏線もない。そしてパリ行きの急行に乗ると唐突に事件が起こる。イーストウッドが凄いのはこのバラバラなタッチにみえた各パートが最後で見事に収斂している点。普通の若者が遭遇したテロと彼らの奇跡的な行動を描くのに映画的な演出は要らないと納得出来る。
主役3人も良い味出してる。
このあとイーストウッドはどやって観客を煙にまくのだろう。
コメントする