「映画の枠を超えた傑作」15時17分、パリ行き HALさんの映画レビュー(感想・評価)
映画の枠を超えた傑作
「これは真実の物語」
このような切り口から始まる映画は数多くある。このような映画は真実を物語として上手く取り込み、映画的な感動をもたらす。ノンフィクションがフィクションとして完結し『いい映画』となる。
この映画では、物語のほとんどは映画的には進まない。つまりドラマとしては何ということのない日常が映し出される。演出らしい演出もなく、よく言って上手く撮れたホームビデオだ。これだったら、他に面白い映画は無数にある。それに“これまでのような面白い映画”を期待するのであればこの映画は不向きである。
この映画の優れたところは、物語が現実と繋がる瞬間にある。この瞬間を演出するための映画と言ってもいいくらいだ(キアロスタミの映画にも同じような演出があるが、あちらはその真実さえ演出されている)。
真実が虚構の中に収まって、『いい映画』として終わるのではなく(もちろんこういう映画も大好きである)、物語が現実へと繋がり、『じゃあ、あなたはどうするんだ』というメッセージに気付く。
これまでの映画が“内に向かっていく感動”だとすると、この映画は外に向かっていく。
この映画的興奮は、他にない。
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