「円谷怪獣への愛に輪をかけて、息つくヒマのない怒濤の展開」ゴジラ キング・オブ・モンスターズ Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
円谷怪獣への愛に輪をかけて、息つくヒマのない怒濤の展開
予告編では、トゥーランドットの「誰も寝てはならぬ」が流れていたが、本編にはない。
その意図は、数千年の間、眠っていた神話時代の怪獣たちを呼び醒ますことを指して、"誰も寝てはならぬ"なのか、はたまた"三大テノール"に掛けて、ギドラ、モスラ、ラドンの復活・・・なのか。
いずれにしても、"こんなもの、誰が眠ていられるか!"というくらいの息つくヒマのないジェットコースター・ムービーだ。
「GODZILLA ゴジラ」(2014)から5年後を舞台にした続編であると同時に、「キングコング:髑髏島の巨神」(2017)ともつながっている、"モンスターバース"シリーズ第3作。ワーナーと東宝とレジェンダリーの強力タッグで、これまでにない物量を投入した最強のゴジラ映画である。
普通はパニック系映画でも、多少の緩急ってものがある。しかし本作は冒頭からエンディングまで一気に駆け抜ける圧倒的なモンスター映画になっている。怒涛の展開に、心地よい疲れを感じるほどだ。
ギャレス・エドワーズ監督が「GODZILLA ゴジラ」(2014)で見せた"初代ゴジラ愛"も並みではなかったけれど、本作はマイケル・ドハティ監督のマニアっぷりが突き抜けている。ギャレスの「GODZILLA」に、庵野秀明と樋口真嗣の「シン・ゴジラ」(2016)が被せれてくれば、さらにその上をいくドハティの円谷怪獣への至上の愛。
改めて円谷怪獣が、"美しく"、"格好よく"、"荘厳で"、"うやうやしく"なる存在であることを再確認できる。そしてゴジラが人間の味方だった作品の復活にもなっている。
両手にソフビ人形の怪獣を持ってぶつけ合う、"怪獣プロレス"は、自分の頭の中ではこんな感じだったとうなずける。
掌中にある怪獣は、必殺の光線を吐かれても、難なく復活するのが当然。まさにファン妄想の見事な再現である。あんな風に"ラドン人形"を空中で回したかったし・・・"。
音楽も伊福部 昭の「ゴジラのメインテーマ」はもちろん、エンドロールでは「モスラの歌」も流れる。
予告編で怪獣たちが見せた、歌舞伎のような見得(みえ)は、実はこの映画のクライマックスばかりだ。けれども単なるネタバレにはなっていない。それらを繋げる"人間と地球(大自然)"というバックグラウンド・テーマが、ちゃんと全方位のモンスターパニック映画を成立させている。
エンドロール後にオマケ映像がある。次作は「Godzilla vs. Kong」(2020年予定)なので、おそらく"モンスターバース"の次々作あたりの伏線になっている。
最後に「ゴジラ対ヘドラ」(1971)を監督した坂野義光氏(2017年5月7日逝去)と、ゴジラのスーツアクター中島春雄氏(2017年8月7日逝去)の名前がクレジットされている。とくに"ヘドラ"は、ドハティ監督がリスペクトし、やはり本作と同じ"人間と地球(大自然)"の衝突を描いた傑作である。
初日はIMAX3Dにしたが、画角はシネスコなので、超巨大なIMAXスクリーンを選ばなければあまり意味はない。3Dを選ぶならドルビーシネマの方がクオリティは断然楽しめると思う。今回は3面シーンがマシマシのScreenXが貴重だ。次はこれかな。
(2019/5/31/TOHOシネマズ新宿/シネスコ/字幕:松崎広幸)