劇場公開日 2018年10月19日

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「信用を失くし、信用を得る男の物語」億男 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5信用を失くし、信用を得る男の物語

2024年2月3日
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鑑賞方法:DVD/BD

お金の話は信用の話と見ます。お金なんてものは、所詮は「単位」。こいつの価値はいくらです、あれの価値はいくらです、あなたの行動はいくらです…という「単位」に過ぎない代物ですよ。

その「単位」を支えているのが「信用」で、多様な価値観をざっくりまとめて「こいつは○○円にしましょう」なんて事を決めている奴がいるんですな。
偉いさんだったり、世間様なんていうあやふやなもんだったりしますわな。

この「お金」ってのが便利なもんだから、あたしらは皆こぞって「信用」してしまう。お金が沢山あれば、何でも買えて、好きなように生きて、幸せになれるんだって、そう信じてしまうんだね。
本当は「信用」の「単位」だったはずの「お金」が、いつの間にか「お金」を「信用」してしまうってんだから滑稽だよ。

そんな「お金」だから、持ってる奴には持ってる奴の苦労っていうのかねぇ。沢山あるからこそ、どうして良いのか訳がわからなくなっちまって、後生大事にしまいこんだり、もっと沢山持ちたいと欲をかいたり、何とか「お金」を御してやろうと躍起になったりするんですな。
それがこの映画の面白味ってもんです。

アクの濃いスタートアップ長者の面々が、実に演技巧者だらけで、特に藤原竜也演じる千住の啓蒙セミナーは「マグノリア」のトム・クルーズを超えたと言っても良いんじゃないかな。
北村一輝の百瀬も最高だったねぇ。最初は北村一輝だって気づかなかったもの。

「お金」を「価値観」と考えている、最も真実に近かった九十九ですら、「お金」の魔力に傷つき挫けそうだった。
そんな彼と作中最も「お金」に翻弄された一男が親友なのも面白いし、「お金」に支配される前の「芝浜」のシーンはとても美しい。

最後に。「銀行口座」とかけまして、「小テスト」と解きます。どちらも「○(マル・ゼロ)」が多いと安心します。
お後がよろしいようで。

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つとみ