「染谷将太に似てると書き損ねたからココに」響 HIBIKI つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
染谷将太に似てると書き損ねたからココに
序盤で響の異常性ともいえるような、普通じゃないエピソードで彼女を形作っていく。響の常識、価値観、概念は、一般的な常識を持っている人物たちと激突していくことになる。大体、バーで鬼島と会うところくらいまでかな、そこまでは響とその他の人物の常識のズレに腹を抱えて笑っていた。本当にシュールで笑えたんだ。
一見すると異常行動のアブナイ女子高生の響と、その他の人物で、正しい事を言っているのはどっちだ?おかしいのは本当に響なのか?このアベコベな感じが笑えたんだよね。
そして鬼島とバーで会ったあたりから響の行動、言動は他者に影響を与え始めるようになる。
ここまでくると響のキャラクターにブレはなくなり、予測可能なキャラクターになっているのだが、イマイチ信用できない不安が残るため、何度か訪れる不穏な場面でハラハラドキドキしてしまうサスペンスも面白かったよね。頭では何もしないだろうと考えていても、彼女ならもしかしたらと思わせるには十分な演出とキャラクターだった。
響は、実は映画的には主人公らしくない主人公なのだ。初めから終わりまで一貫していて変化や成長がなく、他者に影響を与えていくだけのキャラクター。「ディープインパクト」でいえば隕石の「ロード・オブ・ザ・リング」でいえば指輪のポジション。
響の言動、行動、小説によって変化する回りの人々を楽しむ物語で、そういう意味では響というキャラクターは、小説が好きなだけの女子高生で、とても退屈な主人公だったとも思える。
それでも面白かったことに変わりはないけれど。
響の「あなたの小説、好き」という言い回しに少々違和感を感じていた。天才小説家とは思えないほどの、最も幼稚な表現ではないか?響の純粋さを表す言葉選びなのかなと考えたが、答えはラストシーンにあった。
「傑作」や、それに類する言葉は物語上使えなかったんだね。鬼島に対しても「天才」とは言ったが「傑作」とは言わなかった。
回りの人たちが響の小説に対して「傑作」だとはやし立てる中、天才鮎喰響にとっては、まだ世の中に「傑作」と呼べる小説は存在していないのかもしれないね