「連載中の映画化は難しいものだけれど、主役に魅せられました」響 HIBIKI Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
連載中の映画化は難しいものだけれど、主役に魅せられました
ナゾの魅力を持つ映画である。それは主演の平手友梨奈の存在によるところが小さくはない。個人的にはファンでもなんでもなく、秋元康プロデュースの"その他大勢アイドル"にすぎないので、第三者として純粋に、この17歳の少女に魅せられた。
本作は、小説家をテーマにした漫画「響 〜小説家になる方法〜」(柳本光晴)を原作とする実写映画である。
ある日、文芸界に15歳の天才女子高生小説家が現われる。そして少女の処女作は、一気に芥川賞と直木賞のWノミネートを成し遂げる....
原作マンガは、ビッグコミックスペリオールでいまなお連載中である。ふつう、連載中のマンガの実写化にいいことはない。エンディングが存在しないからだ。
この映画も映画としてはまったく完結していない。本作の内容はプロローグでしかないのだが、原作の内容が濃いからなのか、ギュッとつまっている。これは観るに値する。
出版社が、有名ベストセラー作家の娘を、"2世作家"として売り出したり、新人賞としての"芥川賞"・"直木賞"は、本を売るための演出側面を持つことをストレートに描く。不況に苦しむ出版界の楽屋話であり、そこに小説を愛する天才・響が救世主のように現れるのが爽快なのである。
平手は、アイドルグループ"欅坂46"のセンターとして人気があるのかもしれないが、それは秋元康の演出のおかげである。
女優としての実力は未知数で、"シロウト"といえばその通りだろうし、"アイドル人気の主演"と言われても仕方がないはずだ。しかし原作の響ちゃん=平手友梨奈のアテガキではないかと思うほど、その雰囲気が一致している。
そんな"素の演技"が評価できるかできないかは人それぞれだろうが、この作品は脇を固める実力派のキャスティングで支えられているのも大きい。
響の担当編集者に北川景子。まさに"北川景子、ありがとう"である。さらにアイデアが枯渇した小説家を北村有起哉が演じ、何度も芥川賞にノミネートされながら受賞できない小説家を小栗旬が務める。また小説家仲間として、柳楽優弥も出ている。
監督は月川翔。姓は英訳すると、"Moon River"、映画由来のペンネームかと思いきや、実は本名らしい。まだ30代半ばながら、つい先月のコメディ映画「センセイ君主」(2018)や、昨年の大ヒット作「君の膵臓をたべたい」(2017)があり、期待のヒットメーカーである。オリジナル作品は撮らないのかな。
連載中の原作があるわけで、当然、"この続きが観たい"となってしまう。それは3年後、5年後? そうなると、主演は平手友梨奈のままで行けるのだろうか?
(2018/9/15/ユナイテッドシネマ豊洲/シネスコ)