「集大成…想いを伝えることのもどかしさ」劇場版コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命 しゅうへいさんの映画レビュー(感想・評価)
集大成…想いを伝えることのもどかしさ
連ドラ全3シーズン及びSPドラマはリアタイ済みです。
シリーズが始まって足掛け10年、幾度と無く過酷な修羅場を潜り抜け、固い絆で結ばれた藍沢たちの別れと、新たなる旅立ちが描かれました。彼らの成長を見守り続けて来たファンにとっては待望の映画化であり、感無量のシリーズ集大成と言える作品になっているなと思いました。
藍沢たちは、歩むべき道を模索しながら、様々な出来事を通して苦悩し、挫折しそうになりながら、目の前のハードルをひとつひとつ乗り越えて立派な医師に成長しました。ですが、成長したからこそ、新たな試練が降り掛かって来ました。
ハードな災害現場での救命活動もそうですが、新人フェローの指導、恋人との関係、人生のターニング・ポイントにおける選択など、いろいろな局面で傷つきながらも懸命に、且つ真摯に向き合っていく彼らの姿に深い感銘を受けました。
大切な人に想いを伝えることの難しさやもどかしさが、様々な感涙エピソードを通してしっかりと描かれていました。
普段から近くに居過ぎたり、ずっと一緒にいるが故に後回しになってしまったり、素直になることが出来なかったり…
自分の想いを大切な人に伝えると云う行為がいかに尊いものか、スクリーンを通して痛切に胸に響いて来ました。
生きることとは、誰かの心に寄り添い、または寄り添われながら、想いを伝え、かけがえのないものとは何かを知り、ずっと大切にしていくことではないかと思いました。
大変面白く、感動的な作品でしたが、正直なところ、テレビドラマのスケールからは脱しきれていない、と思いました。
ドクターヘリの飛行シーンや災害現場の描写でスクリーンを意識した撮り方は散見されたものの、予告編やあらすじにあるようなスペクタクルはイマイチだな、と…
連ドラの最終回で大規模な事故現場が描かれるのがお約束ですが、それが大体前後編に分かれる分量(正味90分ほど)なのに加えて、本来連ドラ1シーズン掛けてじっくり描くべきレベルの物語を、2時間の尺の間に凝縮するには少し無理があったのではないかな、と云う気がしました。
リアルな医療現場と濃密な人間ドラマは、本シリーズにとっては決して切り離すことの出来ないテーマなので、どちらか一方に比重を置くことが難しかったのかなと思いました。
例えば、スクリーン映えする大規模災害とそれに立ち向かう姿を描き、極限状況下で医療に出来ることは何か、そこで試される医師としての矜恃や信念とは?―みたいなテーマを深く掘り下げても良かったのではないかな、と考えた次第…
―とかなんとか言いつつも、決して本作がつまらないと云うわけではありません。スタッフ・キャストからのファンへの贈り物としてはとても素晴らしい作品でした。
積み重ねて来た年月の全てが凝縮されているなぁ、と…
シリーズをずっと追い掛けて来たからこそ、グッと来るシーンもあったし、ラスト辺りの感動場面の畳み掛けには、あっさり涙腺が崩壊してしまったのでした…
彼らは、それぞれの目指す道を歩き始めましたが、再び会える日が来ることを心から信じています!
まるでファイナルのような雰囲気でしたが、続編をドラマでも映画でもいいからつくっていただきたい!
息の長いシリーズになって欲しいなと思いました。
※鑑賞記録
2019/03/30:4K Ultra HD Blu-ray
2019/10/12:Amazon Prime Video
2019/12/06:4K Ultra HD Blu-ray
2019/12/07:土曜プレミアム
2022/07/23:土曜プレミアム
※修正(2022/06/20)